プロ選手との練習5

 千葉レッドブルーのプロ選手たちと、一緒に練習をしている城伯高校バスケ部。


 脱力がこんなに大事なのかと思い知らされた。そこで、誰もが脱力に意識を向けて練習に取り組む。


 高宮コーチが苦戦している俺たちに声をかける。


「体の使い方って凄く大事なんだよ、だから、常に体の使い方を意識して練習していこう」


 俺たちは高宮コーチの言葉に頷く。


 高宮コーチの説明に、依田選手がつけ加えた。


「練習内容は、皆と変わらない。でも、体をどうやって使えば、省エネでできるか、そのための工夫が必要なんだ」


 さらに相内選手がつけ加える。


「練習の意味をしっかり考えることが大事だよ」


 練習の意味か。俺はそんなこと考えたことなかったな。というか、プロは練習の時からちゃんと意識しているんだな。


 俺は練習の意味をしっかり考えながら、ドリブルの練習をしようとしたとき、黒崎選手が、ボールを人差し指でくるくる回しながら、口を開いた。


「ちょっと、脳トレもしてみようか」


「脳トレ?」


 貴が頭に疑問符を浮かべている。


 そんな貴の様子を見ながら、笹本選手がニコッとした。


「左手と右手で違う動作をする。バスケには素早い判断力が必要だけど、同時に、いろんなことを判断するよね? だから、同時にいろんなことが判断できるようになる練習だよ」


 灯は左手と右手で違う動作をすることを想像していたみたいだ。でも、イメージがわかなかったのか、貴のように疑問符を浮かべている。


 並木選手はやってみようと俺を呼んだ。


「俺にパス出してみて」


 並木選手は左手でドリブルをしながら、パスしてと合図を送る。


 リズムを変えながらドリブルをしている。その中でパスを出す。俺は、少し緊張しながらも、並木選手に胸からパスを出す。


 並木選手は左手でドリブルをしながら、俺からのパスを右手でキャッチすると、そのままパスを返す。


 これを繰り返していたが、一瞬の隙にドリブルを左手から右手に変えて、右手でキャッチとパスをする。


 両手で違う動きをするって凄く難しい。なかなかできるものではない。でも、俺はふと思う。


 バスケの練習には間違いないが、ちょっと工夫を入れた練習をするだけで、判断力の練習にもなるのか。


 練習もマンネリ化させちゃうとダメということ。練習に工夫か。工夫するためにはどうすればいいのか、練習のアイディアもなかなか思い浮かぶものではない。


 でも、それを考えることもバスケに役に立つのかもしれないな。バスケのテクニックだけでなく、判断力、動体視力なども鍛えるトレーニングにすることが大事なのかもしれない。


 高宮コーチの声に、俺は思考を止めた。


「よし、じゃあ、皆もやってみな」


 俺たちは2人1組になって、ドリブルとパス、キャッチを同時にやってみる。


 快と智樹が早速やり始めた。


 快がパスを出し、智樹は左手でドリブル、右手でキャッチとパスをする。


 智樹は快からのパスをもらったのは良いけれど、キャッチできなかった。また、ドリブルが止まった。


「あれ?」


 智樹は何度もチャレンジしたけれど、やっぱり両手で違う動作をするというのは難しいんだな。なかなかできない。


 でも、面白い。同じ練習でも工夫してやると全く違うものになる。


 俺はもっとバスケが好きになった。

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