プロ選手との練習4
千葉レッドブルーの最強プロ選手チームと練習することになって、ワクワクが止まらない。
どんな練習なのか、何が違うのか。
まずはプロ選手が行なっている練習を見学することになった。
千葉レッドブルーの選手たちは、俺たちがやっているように、ドリブル練習から入っていった。
何か変わったことをするのかと思ったけど、全く練習は変わらない。本当に俺たちもやっているドリブル練習だ。
その場でドリブルを上下左右、高さ、低さ、リズムを変えながらやっている。
ただ、明らかに違うのは、ボールが手の平にくっついているかのようなドリブル。実際には、手からボールが離れている。でも、離れているように見えない。
基本中の基本であるけれど、俺はここまでボールが吸い付くようなドリブルはできていない。
それに柔らかい。力が入っていないというか。手首の動かし方がしなやかだ。確か、最初に高宮コーチが脱力して、肩甲骨を動かすと言っていた。まさに肩甲骨から動かすというのはこういうことなんだと感じた。
「手首には力を入れないでドリブルする。そうすると、ボールは自由自在に動きやすくなる」
高宮コーチが説明する。
「ちょっと、皆のドリブル見せて欲しい。高宮コーチ、良いですか?」
並木選手が高宮コーチに相談している。
「あぁ、良いぞ」
高宮コーチは俺たちに合図した。
「皆に教えてやってくれ」
高宮コーチは千葉レッドブルーの選手たちに頼む。
千葉レッドブルーの選手たちは、城伯高校バスケ部のドリブルをじっくり見ている。
俺と慧は、笹本選手にドリブルのやり方を教わっていた。
「ちょっと肩が上がっているから、下げようか。肘から手首にかけては完全に力を抜いていいよ」
笹本選手に言われて、やってみるも脱力するのは難しい。なかなか力が抜けない。
一方、慧は上手く脱力できているようだ。でも、まだ、脱力したほうが良いとアドバイスされていた。
「じゃあさ、一度、ボールを置いて、その場で普通にジャンプしてみな」
笹本選手が言った。
俺と慧はよくわからないまま、目を見合わせた。
「ジャンプすることによって、腕の力の抜き方がわかるぞ」
笹本選手の言う通りに、俺と慧はジャンプした。
「腕がブラブラしているだろう? その感覚だ」
確かにジャンプをしているとき、腕はダラッとしていて力は入っていない。それに肩も上がっていない気がする。
「この感覚といっても、難しいな……」
慧は何度もジャンプをしながら、力が抜ける感覚を覚えようとしていた。
慧が言っていることは納得できる。
ジャンプしていると、腕に力が入らないのはわかったが、この感覚をドリブルでやるとなると、感覚がズレるような気がする。
「脱力するのも体に覚えさせないといけないから、脱力する練習も必要なんだよ」
笹本選手は、なかなか脱力の感覚を覚えられない俺と慧を見て、練習が必要と教えてくれた。
「脱力に練習が必要なんですか?」
俺は驚く。
脱力はリラックスしているときと同様で、くつろぐときには自然とできるけれど、バスケの時にできないのは緊張などで脱力ができないだけだと思っていた。
緊張を取り除くことだけでは、脱力できないのか。
「頭で考えて意識するのは重要なんだけど、頭で考えるより体で覚えさせたほうが良いんだ」
笹本選手は笑顔で答える。
「普段からリラックスできているようで、実は力んでいたりするんだよ。だから、完全には力が抜けていないことが多いんだ。だから、練習が必要なんだ」
「脱力ってどんな練習をすれば、脱力できるようになるんだ?」
慧が、どうやって脱力を覚えさせようかと頭を抱えている。
「慧、あまり真剣に考えすぎると、脱力できなくなるような気がするけど……」
俺は、慧が脱力で悩んでいるところが面白かった。こんなにも悩んでいるとは。
「脱力トレーニングって難しそうに見えるよな?」
笹本選手はクスッと笑っていた。
でも、その後で丁寧に教えてくれた。
「ジャンプじゃなくても良いんだけど、首、胴体、足をブラブラさせるだけでいいんだよ。グニャグニャに動かす。モゾモゾさせる感じかな」
「もぞもぞさせる感じ?」
俺はイメージができなくて、頭に疑問符を浮かべていると、笹本選手は試してみようと、あることを自分でやってみる。
俺も慧もビックリだった。
笹本選手は前屈をしたのだが、最初は手が床に届かなかったのに、前屈したまま、腕をブラブラさせただけで、床に手がついていた。
「えっ、ブラブラさせるだけで、筋肉がほぐれるのか……?」
慧は呆然と笹本選手を見ている。
「これこそが脱力なんだ。だから、いつでもこの状況を作るために、ブラブラ、もぞもぞさせて体にこの動きを覚えさせる必要があるんだ」
笹本選手の言葉に俺と慧だけでなく、城伯のメンバー全員が同じことを言われていたらしく、それぞれが驚愕していた。
それほどまでに脱力って大事なことだったんだな。
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