ゼロを超えて

 今年も残りわずかとなりました。

 人だらけの寺をバックにアナウンサーがそう告げる映像がテレビに映し出される。

「あんなにいっぱい一人がいたら、神様も落ち着かないよねー」

 横で一緒にテレビを見ていた妹は、うへーと、こたつの天板に倒れ込み、俺も続いて倒れ込んだ。

「まあ神様は大抵祭り好きだし、楽しんでるんじゃないか?」

「そーかなぁ? それにしても今年は色々あったねぇ」

「お、今年の振り返りか? やろうか」

「今年は年始早々のドラゴン退治、大変だったねぇ」

「あぁ、大変だった。年始にあったのはドラゴン退治じゃなくてお前の宿題の手伝いだけどな」

「二月には世界中に散らばった七つの呪いを解いて回ったし」

「全身筋肉痛だったなぁ。まあ、二月にあったのは部屋中に散らばった大豆の回収だけど」

「三月は魔王と戦ったね。紙一重で勝てたけど全身重傷だった〜」

「三月にあったのは花見だな。落ちてくる毛虫を避けようとして転んだだけだし、そんな重傷じゃないだろ。しかも怪我したのは助けて下敷きになった俺だし」

「四月は」

「まだ続けるのか?」

「えー?」

「だってほら」

 俺はテレビを指さした。あと三分だぞ、今年。

「ホントだ! 楽しい時間はあっという間だね」

「そうだな。来年も短いといいな」

 ふと、頭を撫でたくなり手を伸ばすと、頭を突き出してきた。

 数回撫でて、また少し他愛のない話をし、新年までのカウントダウンが始まった。

「3、2、1、ゼロ!」

「ゼロ!」

「あけましておめでとーお兄ちゃん」

「あけましておめでとう」

「今年も、ううん。これからずっとよろしくね!」









〈ゼロを超えて・終〉

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