それぞれのやること
「それじゃあ、僕たちは何しようか?」
「何しようって言われても……。」前回まで2人で何とかしようと思っていた所、急に役割を取られたみたいで西浦さんは不満そうに見える。しまったな。軽率だったか。
「俺、今研究室のネットワーク担当してるんだよね。この部屋でスマホ使えないと、あいつらもやりづらいだろうから、この建屋のどっかから線引っ張ってきてwifi飛ばせないか見てみるよ。」杉下はこういうときめっちゃポジティブで素晴らしい。提案内容も最高だ。
「じゃあ、私は配線を通せる経路があるか、調べますね。一応、建築事務所で図面とか見てるので、何か役に立てるかもしれないです。」西浦さんの機嫌も少し直ったみたいだ。
「そんじゃま、俺はこのシステムの回路でも見ておこうかな。こんな複雑な回路見たことないし、次なんかぶっ壊れたときに役に立つかもしれないしな。」電気工学科の田中はなんとなく、使命感よりも興味のほうが勝ってる感じがするが、まあそれはいいか。
「俺はノートを見させてもらうよ。難しすぎて読めなかった所あったって言ってたろ?理論で詰まってるところがあったら僕ならわかるかも。」普段は良くわからん数式ばっかの本を持ち歩いてる横木がこんなに頼もしく感じるだなんて。
「で、穂高は何するんだ?」
「え?僕?えーっと……。どうしようかな。あ、そうだ。父さんのことを少し調べてみるよ。ここには無い資料とか残ってるかも。」
「ふーん、そうか。」
あれ?僕だけ急に無職になっちゃったとか?いやいや、僕と父さんの付き合いは20年以上あるんだし、僕にしかわからない父さんが隠した秘密とか発見できるに違いない。
「ま、とにかく、みんながやれることをやろう。あと、今日の夜はどうやって過ごそうか?深夜2時には僕の家かこの演算室かどちらかにいないといけないんだけど。」
「そうだなぁ。俺らはここでやんなきゃいけないことがあるから泊まることにしたほうがいいと思うんだけど。穂高は親父さんの家とか調べに行ったほうがいいんじゃね?そしたら、じぶんちで寝れば?」
「え?あ、そう?じゃあ、そうするね。」
「あと、朝飯も明日の朝頼むわ。」
「はい、先輩、お願いしますね。」
「う、うん。って、え?西浦さんもこっちに泊まるの?」
「え?だって私もここの建物にいたいですもん。」
「え?あ、そ、そうか。」
あれあれ?西浦さんとこいつらで一夜を過ごすってこと?大丈夫なのか?いや、このメンバーなら大丈夫だと思うが、僕も何もしてないわけだし。でも、僕と西浦さんの関係って終わっていきやしないだろうか……。でも今強引に西浦さんを連れて行くというのもなんか変だし……。
「じゃあ、僕行くね。買ってきてほしいものあったら連絡してちょうだい。」
僕はとぼとぼと研究所を後にした。
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