調査開始

7人は重力物理学研究所の入り口横にいた。夕陽が意外と強く、早く建物に入りたかったが、受付が無人になる瞬間を待つ必要がある。いつ受付が無人になるか、前回西浦さんに確認しておいてもらっておいてよかった。流石にこの大人数で急に入ろうとしたら、入り口で止められてしまうかもしれない。


「よし、今だ。みんな行こう。」

「お、おう。なんかスパイか忍者みたいだな。」

「忍者はIDカードで入らないから、スパイかなー。」


僕は抜いておいた父さんのIDカードで入る。ひょっとして退場記録が無いからエラーになるかもしれない、と思っていたが、退場管理はしていないようでよかった。


「こんなところ、初めて入ったよ。」

「うちの大学の建物より正直古いな。」

「なんか有名な先生とかいるのかな?」


「みんなうるさい。誰かに気が付かれたらどうするんだよ。」


「大丈夫だよ。連休に仕事している先生なんてほとんどいないよ。うちの教授、ずっと研究会という名の沖縄旅行だぜ。」

「そんな中僕の父親は泊りがけで研究してたらしいけどな。しかもそれで何か怪しまれることもなかったということは、いつもやってたっぽいけどな。」

「お、おう。そうだな。すまん。」

「別にいいよ。」


無事に演算室について、例のギシギシ言う重たい扉を開く。


「ここがそのコンピュータかー。いわゆるスーパーコンピュータってことだなー。」と高岡。

「そうだな。うちの大学のスパコンより規模がでかそうだな。」と木村。

「え?木村もスパコン使ってるの?材料系でしょ?」と杉下が目を丸くする。

「お前、古いなー。化学もスパコンでシミュレーションする時代なんだぞ。」

「へー、そうなんだ。」


みんな緊張感無いなぁ。でも、とにかく、専門家?が増えて心強いことには違いない。


「この端末だな。」高岡がディスプレイの前に座る。

なにやらカタカタと打ち込むと、たくさんの文字列が表示された。


「ねぇ、なんかわかった?」


高岡は無言で更にキーボードを叩く


「ふーむ……」高岡のため息が漏れる。

「どう?わかる?」


更にキーボードを叩く音が部屋に響く。


「えーー。」と、高岡。

「どうした?なんかあった?」


ディスプレイを覗き込む。


「なあ、どうなんだ?」

「だーー、もう。うるさいなぁ。いまいきなり見てなんでもわかるわけ無いだろう。ちょっと黙っててくれ。」

「ごめんごめん。少し静かにするよ。」

「ただ、1つわかったことがある。」

「なんだ?それ何?」

「お前、Fortranって言ってただろ?」

「うん、そうだけど。」

「それ、多分違う。正確に言うとFortranだけじゃない色んな言語が使われてるっぽい。で、細かいところはわからない。知らない拡張子もあるから、それも調べないといけないし。時間かかるなこれは。」

「そうか、どうしよう。」

「ネットで調べたり、誰かに聞けば分かることは分かりそうだから、とりあえず俺は色々探ってわからないことリスト作るから、明日以降外で調べるよ。ここはスマホの電波も悪いみたいだし。あと、俺は情報系だけどスパコンは詳しくないから、木村にも見てもらったほうが良さそうだな。なんか知ってるかも。」

「え?俺?先輩から引き継いだコードをいじってるだけだけど……。」

「わかんなかったら、その先輩って人に聞けばいいじゃん。人類滅亡の話さえしなけりゃいいんだろ?」

「わかった。」


と言うことで、僕たちは高岡と木村を残して、残りのメンバーで次回以降のやることと、今夜の過ごし方についてみんなで話し合うことにした。

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