第6話、各々の正義
ひしゃげた「鳥籠」が転がっている。
その横には、恐ろしい形相で顔が半分「食いちぎられた」死体が転がっている。さらに有機体以外は足の踏み場もない程のジャンクと巨大な羽で埋め尽くされている。
古のドラマにあった体育館ぐらいだろうか。その巨大で鋼鉄製の「鳥籠」の周りには人の大きさ程の羽が散らばっていた。
バイクから降りて、ゆっくりと「それ」に近づいていく。
森の中心部。アジトから少し離れた場所にその「鳥籠」はあった。
『これは、これは、どうしようかね』
『めちゃくちゃお怒りってやつだな』
どうやらシンジケートは「神さま」を捕まえていたらしい。いつぐらいから捕まっていたのか。
『ここ半年ぐらいだ』
!?
『この森は我の守護する地域。声ぐらいは聞こえる』
『理性ある方でしたか。大変失礼致しました』
理性ある相手は「人権」が認められている。
それを拘束するのは、それだけ重大な犯罪だ。
『地域の者を人質に取られてな。連邦軍が来るまで大人しくしていた』
『あー、俺らは毎年交代で来ますからね。来たら先ずはパトロールなので、その時がチャンスだと』
『ああ。人が多ければ守りきれるとな』
ほら、パトロールって重要じゃん?
別に大切じゃないとは言ってねーだろ?
2人で突き合っていると、神鳥は大きく震えた。
『村の皆は無事か』
『はい。変わらず。しかし、あなたが捕まっているとは知らなかったようです』
『我はそれほど頻繁に会わないからな』
『もうすぐお祭りだと聞きましたが』
『ああ、その時に姿を見せなければわかると思っていた』
『さて、あのきのこはどうした?』
『焼き払いました』
『ああ、だからいい匂いがしていたのか。あれは我のおやつだったんだ。何年か前に特に出来がいいやつを村の子どもにあげたら、いつのまにか研究材料になっててな。それで他国に先駆けて我が国をあげて名産品を作ろうとしたところ、他の星のシンジケートに騙されて奴等に調査許可を与えてしまった』
『これ、名産品になる予定だったんですね』
『ああ、我の羽を肥やしにして育てると味が濃くなる。毎年、祭りの時に村の皆と食べるか、子どもの節目に分けるのだよ。このきのこを食べると毒に強くなるし、ひとくちで毒がわかるようになるからな』
『グルメになる、というより腐ったものがわかるって感じなんですね』
『食材の鮮度も充分にグルメだな』
ため息をつく神鳥さんに同情してしまう。
自分用のおやつ作りがとんでもないことになって、さらに囚われてしまった。
『此奴らを壊した罪は償うつもりだ』
『いえ、これは正当防衛行為に認定します。聴取にはお伺いしますが、書類送検止まりです』
それはよかった。流石に腹が立ってな。
と、どことなく罰が悪そうな巨大な鳥と、恐怖で引き攣った顔の死体が降り注ぐ光の中で際立って見えた。
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