巨人/レトリア




 巨人の体内は神とつながっているとされている。

 その体には小宇宙が宿り、そこから創出される宇宙線や光、重力を束ねあげて戦う。

 小宇宙から生まれたエネルギーは排出口から直接射出することも、硬化させて銃や刀剣状、投擲武器等様々に変形させることも可能。

 現存しておらず、伝承だけが残っている。


 レトリア・フラウシュトラウス

 巨人と毒の花の戦争が終わった後に、神が巨人の亡骸から造ったとされている人形。毒の花を駆除する戦闘用のみに造られた巨人とは違い、人類が親しみやすいようにと幼い少女に寄せられたデザインをしている。

 ただし人類を守護する目的において設計されたのは共通しており、有事の際には“鎧”と呼ばれる赤い兵装を周囲に浮遊させて戦う。

 神を欲するあまりに毒の花という虚像を作った罪科ざいかの反省点を踏まえて、人類はレトリアを神の正当なる代弁者として信仰の対象にした。

 三界に最大の危機が迫りし時に目覚めるという聖典の教えと共に、フラウシュトラウス家は眠りしレトリアを長年にわたり守護し続けてきた。


「親しみ、やすい……? アレが?」

「不敬だぞマツバ」

「でもよ大佐、大佐はまだ動いたり喋ったりしてない、眠ってる頃のレトリア・フラウシュトラウス姿お参りしたことあるんだろ? そんときはあんな無愛想でおっかない風になるの想像できたか?」

「人智を超えたお方のご容貌に、そんな勝手でしょうもない口出しができるか。ただ……」

「ただ?」

「レトリア様のお姿がどのように決められたかは、神学上よく議論の的になったそうだ。過去には瓜二つの女性が生まれてきてレトリア様の双子を騙る、レトリア様と同じ白髪赤目の女性が崇拝の対象または迫害の対象に移り変わるなど、騒動が度々起きたこともあったそうだが……。結局なぜ人類が今の形に進化したのか、なぜ聖典は未来を預言しているのか、と同様に神がまだ語られていないことは憶測で語るべきではない。という形で据え置きにされている」

「ふーん。アダムとイヴもいろんな想像上の姿で描かれてるけど、本当に実在してさらに実際の姿が残ったりしてたらどうなってたことやら。顔そっくりな奴が宗教家に詐欺でも働いたりしたのかね」

「あだむといゔ?」

「地球の宗教の一つに出てくる人類の起源だよ。もっともそいつらはルールを破ったことで、神の怒りを買って楽園から追い出されたんだけどな」


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よはばら~この世は薔薇、咲けども咲けども棘のまま外伝~ 水長テトラ @tentrancee

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