第15話  愛してる

 オレはその夜、真奈美を抱いた。


「別れましょう」の答えなんて決まっている。


 真奈美は全然わかってない。

そんな簡単なもんじゃないだろう。


 オレは頼りないかもしれないけど。頼りなくても、一緒に進んでいけば道は何とか開けていくに決まってる。


「真奈美。オレ、絶対別れないからね」


「でも、迷惑を……沢山かけると思うから」


「迷惑なんて思うわけないよ。大丈夫。オレが支えるから」


 言葉だけじゃなくて身体でも、真奈美を愛してるってこと、感じてもらいたかった。

真奈美は全然わかってない。

オレにどれだけ愛されてるのか。


「楓……」

 

 真奈美の涙が頬を伝いシーツに落ちた。彼女ともっと深く繋がりたくて、溶け合うようなキスをする。


 彼女をもっと包み込みたくて、強く強く抱きしめた。


 彼女はしっかりしていて自立した女性、なんかじゃなかったんだろう。ちょっと自信がなかったりする普通の女だ。オレに遠慮して全部一人で抱え込んでしまうような弱いところのある女性ひとだったんだ。


「真奈美、大好き」


「真奈美、ごめんね」


「真奈美、一生大事にする」


 オレの言葉が宙に放たれた。真奈美の心に届くといい。言葉の意味だけじゃなくて、その感覚きもちをどうか受け取って。


 真奈美の病気は今後どのように進行していくのかわからない。でもどんな風に時が進んで行ったとしても、運命を受け入れていこうと思った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る