第八章 逆ハーレムまっしぐら
第131話 いざ、天界へ
翌朝、俺達は天界にやってきた。どうやって来たかは……よく分からない。何せトナカイが速いのだ。ソリに乗った瞬間に景色が一変、数分も経たない内に天界の入り口に着いていた。
ちなみに、全員で行く必要もないのでアーサーらは人間界で留守番だ。
「なんか吐きそう……」
「お兄様、大丈夫ですの?」
「ノエル達は大丈夫だったの? 物凄く揺れたんじゃない?」
「いいえ。袋の中はとても静かで快適でしたわ。ね、皆様」
ノエルや仲間は皆、サンタの袋の中に入って移動したのだ。何故って、ソリは二人乗りだから。
仕組みは分からないが、サンタの袋は無限に何でも入る。人間が入っても害は無いらしい。
「俺も袋の中が良かったな」
「何を言っておる。愛し子を袋なんぞに入れたら、誤解を解く前にこの世から永久追放じゃ」
「そんな大袈裟な……」
「とにかく、そこの門に光の力を流し込めば開く」
サンタに言われて、とてつもなく大きな門を見上げた。門の周りは霧で覆われ、門以外何も見えない。というより、門しかなさそうに見える。今立っている場所も地表なのか、はたまた雲の上なのか、それすら分からない。
そんな場所をゆっくりと歩き、門に近付いた。そこに右手を翳して光の魔力を流した。
ギギィ。
「開いた」
「よし、早く行こうぜ!」
「ジェラルド、軽いなぁ」
こういう時は、厳かに開く扉を前に息を呑んでゆっくりと一歩足を踏み入れたいものだ。
「オリヴァー、早く行こうよ!」
「リアムも楽しそうだね」
「天界なんて、未知の世界だからね」
結局、ジェラルドとリアムに両側から手を引かれ、まるでテーマパークにでも来たかのように門の中に足を踏み入れた——。
中はリンゴの果樹園ではないかと思わせる程にリンゴの木が並んでいた。しかも、リンゴは赤や緑ではなく、金と銀だった。
「天界と言えば金のリンゴですわよね!」
「そうなの? ところで、神様は何処にいるの?」
振り返ってサンタに聞けば、サンタはまだ門の外にいた。
「わしはやはり中に入れんみたいじゃ。此処で待っておる」
見えないバリアに阻まれ、サンタはそれ以上進むことが出来なかった。
「そのまま真っ直ぐ進めば泉がある。大抵神はそこにおるから頼んだぞ」
◇
「うわぁ、天使がいっぱい」
泉には神がいると聞いていたが、真っ白い翼を生やした天使がザッと十体はいた。どれが神だか分からない。
天使は不思議そうな顔で俺達を見るが、警戒はしていなさそうだ。
「神様の居場所、聞いてみよっか」
相変わらず度胸のあるエドワード。近くにいた天使三人組に声をかけに行った。
数十秒後、困惑した顔でエドワードが戻ってきた。
「どうかしたの?」
「三人共みんなバラバラの事を言うんだ。一人はあそこにいるのが神って言ったり、もう一人はここにはいない。そして、最後の一人は私が神だ、って」
「誰かが嘘吐いてるのかな?」
俺が首を傾げれば、リアムが顎に手を当てて言った。
「これは面白いね。神を当てるゲームみたいだ。僕、ここにいる全員から情報収集してくるから、少し待ってて」
「一人は危ないだろ。オレも付いて行くぜ」
「兄ちゃんが行くならボクも」
そう言ってリアムとキース、ショーンは、天使らから話を聞きに行った——。
「お兄様、待っている間、あれに乗りませんこと?」
「ボート? 勝手に乗っちゃダメでしょ」
「こちらに『ご自由にどうぞ』と書かれていますわ」
「本当だ」
ボートの近くに看板が立っており、確かに書いてあった。
「では、お兄様。どちらと乗りますか?」
ノエルがジェラルドとエドワードの腕を組んで聞いてきた。
「どちらとって、ノエルが乗りたいんじゃ……」
そこへ、エドワードの熱い視線が俺に訴えかけてきた。
「俺、ジェラルドと乗るよ」
「仕方ねーな。お前漕げよ」
「うん」
チラリとエドワードを見上げれば、満面の笑みを浮かべられた。
「ノエル、二人が戻ってくるまで僕と散歩でもしてよ」
「ではお兄様、わたくしはエドワード様とお散歩して参りますわ。ジェラルド様と素敵な時間をお過ごし下さい」
「はは、じゃあまた後でね……」
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