第18話 毒草を探す少女
数週間後。
地味……Fランク相当の依頼を次々とこなした俺達は遂にワンランクアップした。
「やっとだよ! レベルアップって時間がかかるんだね。Fランクの勇者なんて恥ずかしかったけど、Eならまだマシだよね」
「どっちもどっちだと思うよ」
「もう、リアムだって本当は嬉しいくせに」
俺とリアムの会話をよそにジェラルドとエドワードは口々に言った。
「でも、何で歩きなんだ? 隣村までかなり遠いだろ。馬車借りて行きゃ良いのに」
「ノエルが歩きが良いって言うんだから。女の子の意見を尊重させないと」
そう、今は隣村まで徒歩で移動中。せっかく冒険に出たのに同じ場所にとどまるのは勿体無い。色んなものを見て感じたい。
ただ、徒歩はノエル立っての希望だ。
「だって、冒険と言えば徒歩ですわ! 三蔵法師だって天竺まで歩いていましたわ」
「誰だよ、それ」
「みんな気にしないで、ノエルは異国の本にハマってるんだ」
誤魔化してはおくが、本当にノエルは何の本を読んでその知識をつけているのだろうか。
歩いていると川が見えてきた。
「あの川の近くで休憩しよう」
——川のほとりまで行くと、それぞれ荷物を置いて休憩し始めた。
のどかな景色を眺めていると小川の近くに五歳くらいの少女が下を見ながら歩いていた。ただ、少女の近くには大人の姿が見えない。
「こんな所で子供一人、何してるんだろ?」
「迷子じゃね? 俺、声かけてくるよ」
「待って、俺も行く」
ジェラルドが立ち上がったので、俺も続いた。
——ジェラルドと二人で少女に優しく声をかけてみた。
「お父さんかお母さんは?」
少女はビクッとしながら応えた。
「いないよ」
「えっと……おうちはどこ?」
「……」
「どこから来たのかな?」
「……」
何も言わない少女に俺とジェラルドは顔を見合わせて眉を下げた。
ここに一人置いていっても良いものか。途方に暮れているとジェラルドがやや苛々し始めた。
「なんか言えよ。心配してやってんだろ」
少女は怯えた表情を見せたので、咄嗟に庇った。
「ジェラルド、ダメだよ」
「だって何も喋んないから」
ジェラルドの気持ちも分かるが、知らない男に声をかけられて黙ってしまう少女の気持ちも分かる。
どうしようか悩んでいると、少女が俺の服の裾をギュッと握った。
「見つからないの……お薬が見つからないの」
「薬? 誰か病気なの?」
「お母さん。村で今流行ってる病にかかっちゃって」
「お前、名前は? 俺らが一緒に探してやろうか」
「……」
ジェラルドが聞けば少女が再び黙ってしまった。俺は少女の目線まで屈んだ。
「君、名前は? どんな薬探してるの?」
「アンだよ。これ探してるの」
アンはポケットから折り畳まれた紙を広げて見せてくれた。
「チッ、同じこと聞いてんのに、どうしてオリヴァーの質問には応えるんだよ」
不貞腐れているジェラルドに苦笑で返し、少女が探しているという薬草の絵を見た。
「これって……」
「お兄ちゃん知ってるの? この薬草が効くんだって」
「そっか……一緒に探そっか」
「うん!」
アンの持っていた紙に書かれた薬草は、毒草だった。
◇
翌日、俺達はアンの探している毒草を採取した後、アンの住むククル村までやってきた。
「一泊野宿したので、お母様が心配していますわね」
「うん。でも、お母さんこれで良くなるね!」
アンが嬉しそうに話す中、俺達は顔を見合わせて眉を下げた。
もしかしたら本当に薬になるのかもしれないと淡い期待を抱いて毒草は摘んだが、本当に淡い期待だ。
「流行病って聞いたけど、皆が皆って訳じゃないんだね」
村人の数は少ないものの商店は普通に開き、子供達は元気に走り回っている。
リアムは怪訝な顔を見せながら俺に言った。
「オリヴァーとノエルはアンを家まで送って行って」
「え、三人はどこ行くの?」
「流行病について調べてくるよ。僕らはアンに好かれてないし、それに、こんな大勢でおしかけたらアンのお母さんびっくりしちゃうでしょ」
「確かに」
そういうわけで、俺達は別行動することに。
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