第74話


 気が付けば会場に到着し、僕等は下車を促される。


 下車した僕は開場までの待機場所へ案内された。

 ガウェン様は準備を行う為、別の場所へ。



  ◇  ◇  ◇



 「本当にセルムさんも護衛に入るのですね」


 待機場所にて、ルディーデ君が話し掛けてきた。


 「一応名目は違うから、あんまり他言しないようにね。変な誤解はされたくないし」


 僕は口の前に人差し指を立て、内緒だというゼスチャーをする。


 「その話も聞いてます。あっ、あと……」


 ルディーデ君が何かを言おうとしたその時――



 「まさかこんな所で顔合わせするとは思ってなかったぜ」


 ルディーデ君の背後から、ウォレンが姿を見せた。


 「!?なんでウォレンがいるの?」


 僕は驚いて尋ねた。


 「多分、お前と同じだよ。それに、ガウェン様とは旧知の仲だしな」


 悟っている様子でウォレンは答えた。


 「にしてもリオン様の護衛は?」

 「あっちこそ俺一人居なくともどうって事は無い。お前の方こそ大丈夫なのかよ?」

 「関係ないよ。僕は元より世話役でしかないからね」

 「お偉方は本当にそう思ってるのかねぇ?」

 「……さぁね。それは僕の知るところじゃないよ」

 「勿体無いとは思うけどな。まぁ、お前は武功を上げたいって訳じゃないから丁度いいのか」

 「ああ、その通り。あっ、ルディーデ君、今何を言おうとしたの?」


 僕はルディーデ君に話を振った。


 「いえ……ファーネル様も来ていますよ、と伝えようとしたのですが」


 本人が先に現れてしまった為、戸惑うルディーデ君。




 僕等が他愛も無い雑談をしていると、祭事用の衣装に身を包んだガウェン様が現れる。


 「では、皆さん。行きましょうか」


 僕等一同は頷いた。

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