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そもそも私が、大学へ通うには不便というこの田舎町で、ひとり暮らすことを決めたのは、当地では『多くの未確認生物の目撃情報がある』と、過去に耳にしたことがきっかけである。
それゆえ、すでに小学生の頃から同生物に興味を持っていた私は、後に大学進学と共に、それについて研究する傍ら、実家から独立。その目撃情報の裏付け等の為、ここコロコロ町で生活し始めたのだった。
成果はといえば、いまのところゼロだけどね。
そう、そんな私にとって今回の件は、その『裏付け』には、もってこいの機会という訳です。
ともあれ、そういった目的から当町へ引っ越して来たらば、たまたま近くに幼馴染の三徳にーさんが住んでいた。とまあ、彼は未確認生物じゃないけど、とにかくこれも何かの縁なんでしょうね。
さて、その縁ありき私と三徳にーさんは、先ほど例の潜水艇『HS−100』でもって、かの湖『屈茶呂湖』(くっちゃろこ)に入った。
ちなみに、ご覧の通り流線型を成す同潜水艇は、古いタイプの小型自動車をベースに作成。だけに、普通に地面を走行することも出来れば、その車輪を収納することで、このように水中での活動も可能といった代物でござい。
開発の意図としては、三徳にーさんが、近々『一家に一台、潜水艇』の時代が来る、と予測してのことだったそうだけど…
ええ、いまのところ世の中に、そういった風潮は見られないようです。
「…にしても、三徳にーさん…」
「ん、なんだい。りおね?」
なにやら電子機器等がひしめく艇内。その運転席側でハンドルを操る三徳にーさんが、こっちの助手席に座る私を、ちらと見た。
「…いや、本当にこれが…スクール水着が、この潜水艇用のユニフォームなの?」
透明度は、いまひとつ。フロントガラスの向こう一面に薄灰色が広がる中、まさにスクール水着姿にて私は、いちおー三徳にーさんに尋ねてみた。
「もちろんさ。やっぱり、美少女にスクール水着は欠かせない…じゃなくって、ほら…ワタシだっても、こうして水着を着ているだろ?」
確かに、三徳にーさんも水着姿は水着姿だけど、それは昔の人が着ていたような、半袖半ズボン型のストライプ模様の物である。
う〜ん、私よりもずっと無難な感じで、なんかあやしーけど…ま、いいか。
「さ、さて…我々は、もうちょっと遠くの方を探ってみるとしようか」
と、なにか誤魔化すかのように、三徳にーさんがアクセルを踏み込めば、艇の後部はトランク部分に配されたスクリューが、より一層の回転を始めた。
「そうね。なにせ、捜索隊が目撃位置の付近を探しても、その怪物を発見できなかったって言うんだからね」
「ということは、それはおそらく移動している。すなわち、その怪物は植物状にして植物ではなく…」
「うん、動物と考えた方がよさそうね」
うむむ、こりゃ研究者魂が燃えてくるわい。でも、スクール水着が全てを台無しに。そんな私が、さらに続ける。
「…そうなると、当然それは、なおさら見つかりにくいだろうし…盆人さん大丈夫かしら」
また水中というのも、もちろんヒトが生存するには悪条件だしね。
「うん。なにはともあれここは、出来る限り急ぐに越したことはないだろう」
このふざけた『なり』も何のその。私も三徳にーさんも、いや増して本気モードに突入。
現在の速力は、先よりも上がって約7ノット。深度は15メートル程である。
ろりおね Hiroe(七七七男姉) @138148
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