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 一方その頃…


 ある湖の一角。そこにボートを浮かべ、ルアーフィッシングを楽しむ1人の青年がいました。


 その名も、平盆人たいらぼんど。現在26歳。当コロコロ町の町長さんの放蕩息子です。


「しっかし、きょうはあまり釣れないなー。ひょっとして、水の底に巨大な怪物でもいるせいで、魚が近寄って来ないのかも知れないな」


 などと彼が呟いたところで、やや近くの水面に、


 ぼこぼこぼこぼこっ…


 という大きな泡が、しかも複数に亘って浮き上がってきました。


「な、なんだあれは…?」


 ふと、気づくと共に注目することしばし…


 やがて、その泡の下から巨大な何かが、


 ずざざざぞばーっ…!!


 と、派手に飛沫を上げつつ水面へと現れたではありませんか。

 

「ひーっ…ほ、本当に怪物…?!」


 その盆人の目には今、身の丈20メートル超にして緑の植物状を成す、かくも異様な物体が映っています。


 ええ、いま思えば、素晴らしい盆人の『勘』です。


 ともあれ、よくよく見れば同植物状、水中から太く長く伸びた茎状のところどころには、らしき葉や蔓のようなものがちらほらと。また、その上へ行くほど細くなる茎状の頂点には、これまた大きな蕾状が窺えます。


 その威容、マンモスフラワー開花前。といった感じでしょうか。


「と、とにかく離れた方がよさそうだ」


 はたと我に返るや盆人が、すかさずオールを手にしたものの、後の祭り。


「う、うわぉーっ…!」

 

 突如、例の蔓状に巻きつかれたかと思えば彼は、やはり突如として開いた、その頂点の蕾状の中に、あれよと放り込まれてしまいました。


 そして再び、その謎の巨大生物は、水中へと姿を消していったのです。

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