6

「な、なんなんだ、あの男の格好は…」


「パンツ一丁…ですね」


 やっぱり。ワタシ同様、隣の芹澤さんの目にも、そう映るようです。


 こりゃ、絶対に怪しいじゃありませんか。


 そうなんです。いまスタッフたちの元へ歩み寄ってきた、その男ったら、ブリーフ一丁のみ身に着けた姿なんです。


 正確に言えば、覆面レスラーのようなマスクも被っていますけどね。


 で、そんな男を脇に撮影カメラマンが、小型のビデオカメラに持ち代えました。


 よく見れば、他にも固定の同カメラが窺えます。


 なるほど、今度は動画を撮るようですが…


 でも、まだ乗り込むのは勿体ない…あいや、まだ早いと思われます。


 もちろん、いかがわしい証拠を掴む意味で、です。他意はありません。ほんとーです。たぶん。


 お、これまた監督らしき男の指示の下、あらためてりおねがソファに。また、あのブリーフ男が、その彼女の足元に跪きました。


 いったい何が始まるんだ。ワクワク…もとい、ヒヤヒヤドキドキ。


 と、我々が固唾を呑んで見守る中、なんのつもりかブリーフ男が、りおねの片足を手に取りました。


 そして…そして、頬ずり…ぞぞっ。


 こ、これは不気味。なれど、りおねときたら、くすぐったそうに笑いはしゃぐ始末。


 いやはや、もしワタシがアレをしようものなら、おそらく以前のように右フックでも飛んでくるでしょうーに。


 あれじゃワタシの方が、あのブリーフ男よりも気持ち悪いみたいじゃないか。


 うおおっと、さらにそのブリーフめが、りおねの足を舐め回して…!


 うぬぬ、それでも笑ってるぞ、りおねのヤツ。


 あ、そーだよな。お金が貰えるから我慢してるだけだよな。そうさ、そうに決まってる。


 とかってワタシが、自らに言い聞かせるうち、今度はその両足の裏でもってりおねが、ブリーフ男の頬を叩き出しました。


 はい、もう間違いありません。それすなわち、『足(脚)フェチ』ビデオの撮影です。


 しっかし、あのブリーフ男の嬉しそうなこと。顔はよく見えなくても、そのリアクションで分かります。


 ともあれ、ひとしきり頬を打たれた後、ブリーフ男が床に仰向けに寝転びました。


 次は、なにをする気だ。


 と思えば、またもや監督らしきの指示の下、ブリーフ男の胸に乗ると共にりおねは、そのまま足踏み。初めはゆっくりと静かに、だが徐々に激しく。


 どっこい、それだけならまだしも、じりじりと下っていくやりおねの足が、やがて男の禁断のゾーンへ…!


 これはもう、よく目に焼き付けて…ではなく、乗り込むしかありませんっ。


「芹澤さんっ、大門さんっ…」


 皆まで言わずとも、両者が頷きました。


 この窓の鍵が開いているのは、あらかじめ確認済み。さあ、いよいよ突入ですっ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る