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 さぁて、引っ越しも終わった翌日のこと。


 レトロな和風平屋一戸建て。ここ早置宅は奥の一角に与えられた自室でもって、いま私は、2個のダンボール箱の前に座って、荷物の整理など行っているところである。


 もともと、家具も荷物も多くなかったおかげで、より引っ越しはスムースに完了。しかも、こんな綺麗な部屋を貰えて…いやー、ありがたやありがたや。 


 でも、手放しで喜ぶ訳にも、ちといきません。


 なぜなら、


「それにしても、よく集めたものだわね。こんなに」


 そう、綺麗は綺麗でも、また別の意味も含有。この6畳ほどの部屋には、らしき美少女関連のポスターやらグッズやらが、整然かつ多数に亘って飾られているからだ。


「まあ、このJC子役と、あのアイドルの子くらいなら私も知ってるけど…」


 ともあれ、ここが『空いている部屋』だった訳である。


 確かに、これが空室と言えるのかどうかは微妙な感じだけど、とにかくこれらポスターやグッズを汚さない、という条件を守れば、あとは自由に使っていいそうだ。


 しっかし、こうなると押入れでも開けた日には、いかがわしいロ〇ビデオの1つも出てくるのでは? 


 と、先ほど冗談混じりに、(でも半分本気で)三徳にーさんに尋ねてみれば、


 『そういったものは持っていないぞ。なにせ、ワタシは正統派だからなー。まあ、無垢な花の蕾を愛でるようなものさ。いやっはっはっはーっ…』


 だそうである。

 

 正統派と邪道派の区別は、もちろん私には良く分からないが、まあ、こちとら居候の身。決して贅沢は言えませんので、黙って有り難く使わせて頂くとしましょう。

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