第34話 夜の海岸
「いいセンスじゃないエフェリーネ」
幻想的な風景に思わず見とれてしまう。この光景、一生見ていたいくらい。ホタル見たいな街の光。
昼間は真っ白い、夜は星空が照らす素敵な浜辺。
「キレイよね。今度ヒータと二人っきりでデートしたい!」
「私は──みんなと一緒がいいわ」
フラミリアが引き気味に言葉を返す。確かに、デートみたいなムードもいいと思う。エフェリーネは、遠目に海を見ながらシチリナ王国について話始めた。
「負けられないんですよ──昔は都市国家同士で争いばかりしてました」
「聞いたことがあるわ。私が子供のころに、何度も国王のお父さんが調停したり──支援したり」
「争いがあらかた終わっても、各都市国家に対抗意識は残っていて何かにつけて競い合っているわ。だから、やらかしたら──ネタにされちゃう」
「それは私もわかるわ。実際に周辺国からネタにされたし──」
思い出して、右手で顔を抑える。ついこの間のこと、私たちがここにいるのもそれが原因なのだから──。そのことを、ここで話した。
「そんなことがあったんですか?」
「そうよ。世界中にまずい飯だと言われまくっちゃったの。困っちゃったわ」
ヒータがやれやれといった感じであきれ気味に言う。
こっちは思い出すだけで、頭を抱えたくなる知りものだ。でもエフェリーネが元気そうに言葉を返した。
「じゃあ、私たちと一緒ね。素敵な料理でみんなを見返しましょ! 味なら、相談に乗るから──」
「そう言ってくれると、とっても嬉しいです」
コルルの言うとおりだ。一緒に協力してくれるって言ってくれる人の存在というのはとても頼もしい。
「まあ、ライバルにいろいろネタにされたアスキスならわかるでしょ? 私たちが負けられないってのが」
「フラミリアの言うとおりよ、だから負けられないの。一緒に──がんばりましょ」
対抗意識か──私だってそうだ。近隣諸国と、互いに争いあって自分の国が1番だと競い合って。高めあう。
料理だけじゃない、技術──戦いの強さ、新たな地方への冒険。魔法の開発。
だから、負けられないというのがわかる。ぎゅっと、エフェリーネの手を握る。
「一緒に頑張りましょ!私も力になるから!」
「こちらこそ──相談には乗りますよ。一緒に素敵な料理を作りましょうね」
エフェリーネのその言葉に、力が湧いてきた。いける気がして、立ち上がった。
星空に視線を向けてから、振り返った。また髪が夜風でなびく。
「ありがとう。もう一度頑張れる気がして、とっても力が湧いてきたわ」
そう言って、もと来た道を戻っていった。もう少しだけ頑張ろう。そう考えていると、後ろから足音が聞こえた。振り向くと、後ろにみんないる。
「頑張りましょ! 絶対に他の奴らには負けないんだから!」
「そうね」
みんな、気持ちが戻ってきたんだ。そうだ──みんなで力を合わせれば、今はできないようなことだってできる。力を合わせて、最後までやり遂げよう。
全員、特に言葉を交わさなくても厨房へと向かっていき、引き続き料理の研究を行った。
みんな、真剣に地元の食材を生かしていろいろと細かい味付け。
すでに日付は変わっているが、真剣な空気の中全員が集中し続けていた。ほんの少しの味に細かく話し合う。
そして、朝日が昇ろうとする中完成。気が付けば朝になっちゃったわね。
「何とか完成。ですね、本当にありがとうございました」
目にクマができて、眠そうな目で頭を下げた。
「こちらこそいい料理ができたわ。私の分もね──互いに、よい料理を作れるよう本番では頑張りましょう」
そう言って、エフェリーネと強く握手。それに応じるように、みんな手を出して互いに強く手を握り合った。
「もう──みんな最後まで頑張って、熱中しすぎ!」
「それくらいみんな強い気持ちだったってこと。それはもう、私の──ヒータへの気持ちくらいに」
そう言ってよろけながらフラミリアがヒータに抱き着くと、ヒータはもがきながら言葉を返す。反撃する気力もないみたいだ。
「もう、だから何かにつけて抱き着いてくるのやめなさいよ、もうクタクタなんだから~~」
そう言って、ヒータはフラミリアに寄っかかる。もう抵抗する気力もない気分だ。
確かに、コルルは珍しくあくびをしていたりエフェリーネも座り込んでいたり。私も
どっと疲れが来た。
「とりあえず、寝ましょう。ずっと作業してましたし──」
「そうですね、明後日から店なので下ごしらえとか必要ですし……。
全員が賛同してくれた。みんな疲れてるもんね、本当にお疲れさま。疲れを癒すため、早く寝ましょう。大きくあくびをして、すぐにベッドへ。
「私もつかれた、寝たい」
本当にいい時間だと思った。夜も寝ずに、みんなで一生懸命打ち込んで──最高の物ができた。後は、本番に向けて素晴らしい料理を作るだけ。この努力、無駄にするわけにはいかない。
気が付けば、みんなベッドに倒れこむようにして大きく眠ってしまった。
私もすぐに夢の中~~夜になったら、下ごしらえとか手伝わなきゃ、むにゃむにゃ~~。
みんなの暖かさに触れながら、爆睡。
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