第47話 前置きが長い
「欲を言えばお前達組織のボスのところまで気付かずにいてくれればこんな面倒くさい事をしなくても良かったんだけどな。こんな雑魚に気付かれてしまうとは私もまだまだ修行が足りないという事か……」
「ぐぐ……ふざけやがって……っ!」
おそらくご主人様は勿論、マリエルやスーであってもこんな雑魚相手であれば気付かれずに尾行を続けることができただろうと思うと、私もまだまだだなと思ってしまう。
勿論私とあの人たちとを比べる事が烏滸がましいと思えるレベルで力量の差が開いているのは理解しているのだが、それでも私はご主人様たちに少しでも近づきたいと思う。
そして、私が追撃しない間にブレットは懐から回復薬を取り出して歯で封を開けた後回復薬を口に含み、切り落とされた腕を拾うと、そこへ回復薬を口に含んで吹き付ける。
すると切り口に吹き付けられた回復薬は、どうやらかなり高級品であったようで神経も問題なくくっついたようである。
そのくっついた腕と手の感覚を確かめるようにブレットはくっついた先の手を握ったり開いたりと動かし、問題ない事を確認すると私の方へと視線を向ける。
「この俺を舐めているのだろうが、腕を治すまで黙って見ているのは流石に俺のプライドが傷ついたぜ?」
「あぁ、そう。でもそれはお前がただ弱いからだろう? それを私に言われてもねぇ?」
「その高飛車な態度を後悔で染めてやるから覚悟しておけよ?」
「できない事はあまり口にしない方が良いと私は思うぞ? 実際にできなかった時に恥をかくからな?」
「それはお前もだろう? 久々に本気で行くか……っ!!」
ブレットはそう言うとスキル【身体強化】と土魔術段位三【鋼鉄化】を自身の身体に重ね掛けする。
「重ね掛けは身体にダメージが残るからあまりしたくないんだがなぁ……だが三日間くらいキツイ筋肉痛程度の痛みでお前の顔を恐怖と後悔で染める事ができるのならば安いものだろう? あと、言い忘れたが俺は裏社会で【鋼のブレット】と呼ばれていてな────」
「前置きが長い」
「へ……? ぎゃぁぁああああああああっ!! お、俺の右腕と左足がぁぁあああああっ!? な、何故この状態の俺の身体を切る事ができるんだよ畜生っ!!」
「むしろその程度の硬さで切られないと思っているお前は流石に私のことを舐めすぎだろう? 今まで自分よりも弱い者しか相手にしてこなかった事が窺えるわ。それ込みでダサすぎるな……」
勝てないと思いながらも刺し違える覚悟でドラゴンに突撃して、なんとか相打ちに持ち込めた私からすれば、ブレットは温過ぎると言わざるを得ない。
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