土の記憶

 ポケットから笛を取り出す。ころりと丸い陶器のこれは昔旅行した先で作った物だ。あれはどこの町だったかな。土を捏ねて大きな窯で焼き上げて、後でお送りしますからと言われた通り何日か後に小包で届いた笛は随分と小さくなっていた。吹いてみたらぽうっと大きな音が出て、足元いっぱいに小さな町が広がる。山や畑に囲まれた長閑な町。そうだ、この町だ。

──いつか、また。

 思いを馳せて吹き続けるその脇を鳶が鳴いて通り過ぎる。

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