水晶街無差別殺傷事件について
「なんだその事件?」
「そこの説明はうちに任せて!」とエンビちゃんが彼女の身体からはみ出して挙手して、資料を提示しながら解説をはじめた。
「ちょうど、ヴォイドアウト事件と同じ頃。水晶街の大広場で銃を乱射する事件があった。その場にいたシェイさんの弟であるカイトさんが付き合っていた彼女をかばい凶弾を受け死亡。その他にも子供をかばった身元不明な中年男性が一人死亡と女性が二人腕や腹部に銃弾を受ける。物の破損などが報告される惨事になった」
「いっちゃ悪いが、最近起きた乱射事件よりかはマシだな」と心無い発言。
だけど、被害遺族であるシェイは「世間的に見たらありふれた事件の一件だとは理性としては受け入れている。けれど、本心としては犯人を突き止めたい」と冷静を装ているが、口調が早口になっていて興奮が抑えきれていない。
「心情は理解できるが、見つけてどうするつもりだ?始末したところですっきりはするだろうが、そのあとは一生背負うものになるぞ」
「それは分かっている、つもり……けれど、保留にしておくには辛すぎる」
「確認だが、それはタスク的な意味でか?」
「かもね……否定はしない。保留と言いながら本音としては放置できないことを隠すための言い訳なのかもしれないけど、ずっと心に引っ掛かっている。それに、事件の犯人もそうだけど、カイトにとどめを刺した犯人をぶん殴りたいと思っているのが真の部分かな。植物状態とはいえ、その命を絶った存在を赦せない」と別件のことも示す彼女。
「それで?」
「……結論は出てないけど、真相を識るだけでも前進すると思う。対処はその都度考える。そのための一歩として、あなたにはとある情報提供者に接触して欲しいというのが依頼よ」
「それこそ、隣のインチキ情報屋に調査してもらえよ。誤情報を持ってくるとはいえ腕は確かだ」
「誰がインチキ情報屋だ!!情報元の状況を変えて無意味にする改竄者が!!」
「事実だろうが」
「結果的事実はそうでも、過程の事実は真実なの!」
「だとよ。俺じゃなくて、そいつに頼め」と手を振って厄介払いをする。
が、シェイは「事情を知らないとはいえ、酷い対応ね。でもこれを聞いたら、どう思う?」とムフーとしたり顔を見せて。
「あなたはムチムチのマッチョマンの変態がいる銭湯に、あたしたちのみたいないたいけな女性が全裸で情報をもらいにいくって、アホだと思わない?」とシラーとした目をして問う。
その質問に「アホだと思う」とシンプルに回答。
「でしょ」と納得してもらえたことに満足顔であったが、次に無神経な男が発した内容に再び曇ることになる。
「つまり、そんなアホなことをしててでも、取りに行く価値のない情報提供者ってことだろ」と痛いところを突いた。
「そういわれたら……で、でもね、それが赤の他人のおっさんなら未だしも……実は昔に喧嘩別れした幼馴染で…………気まずくて、小さい頃は裸の付き合いとかあったけど、この歳になると――――」
「恥ずかしいと」と横やりを入れて結論を出す無神経男。
「そういうこと。先に蹴りを入れておくけど、そういう関係だからこそ逆に訊き出すのが難しいところだから、赤の他人にして同性である、あなたに行ってもらいたいってわけ」
「俺は同性愛者じゃないぞ」とツッコミを入れるスグ。
「いや、そういうつもりじゃ……ゴホン、もう一つ理由があるわ。あなたはマッチョマンの変態と戦える実力者だと思ったことも、頼みに来た要因でもある」
「見るだけで分かるのか?」
「……とりあえずはそういうことにしといて」と不機嫌な顔を出しながらもスッと顔色を戻し、「その実力を見立てを見込んで改めて依頼する。その男を倒して、情報をもらってきて欲しい。報酬は一〇〇万でいいかな?」と金をちらつかせて説得を試みる。
「……報酬の発言は試しているのか?バカにしているんか?」と頼まれている本意が訊くと、彼女は「異性と付き合うにはお金がかかるものよ」とニタッとしたり顔。
「はあ、やっぱお前は生粋の流地領の人間だな……分かった。とはいえ、今回限りだ。報酬は銭湯代と今回の飲み物代だけで良い。その代わり、仕事はしっかりする」
「条件にはガッカリだけど、良いわ。その話で契約成立とするわ」とカップの内容物を呑み干し了承。
依頼者は席を立ち握手を要求。その手を仕方ないなと言わんばかりの顔をしながら、スグは掴んでハッとした表情をして「ああ、あの変な三人組の絡まれていた人か」とここでやっと彼女が誰かに気付き、シェイは「……今更気付いたんだ」と呆れた顔をした。
こうしてその依頼を受けることになった。
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