ネットカフェを根城に
一昔前にネカフェ難民という言葉が流行したと思います。ネットカフェに住み着いたホームレスの人の呼称ですね(大体は)。他人事としてその話題に触れていた時期もありましたが、まさか自分がその立場になるとは思っても居ませんでした。
ホームレスを初めて一か月。一日のルーティーンはほぼ決まっていました。
休日の場合は図書館に行き、ひたすら寝ていました。平日の場合、両親は仕事に出ているのでこっそり実家に帰っては猫に会い、短い安息の時間を享受していました。食べ物は盗りませんでした。バレた時が面倒だからです。ただ猫と会い、屋根の下のプライベートな空間を精一杯堪能していました。
親が帰って来る前に家を出て、町に出ます。ホームレスを初めて最初の頃は前述したようにベンチやトイレで過ごしたり、24時間営業のコインランドリーで暖を取っていたりしました。が、流石に身体が持たないので、学生の就活時代にネットカフェに寝泊まりしていたことを思い出し、地元のネカフェに行きました。
当時の価格で、21時~7時で1580円。しかも風呂まで付いていました。ボックス席は狭かったですが、逆にその狭さが何となく安心感を与えてくれました。毛布も枕もあり、飲み物もアイスも自由に手に入りました。寝心地や他者の存在を気にしなければあまりにも破格な環境だったと思います。
惨めな気持ちには意外とならず、寧ろネットは使い放題漫画は読み放題風呂は入り放題の環境を割と楽しんでいました。
ホームレスを始めた時の貯金は40万円程でした。これぐらいあれば、次の仕事までに何とか生きていける。そう思っていました。
が、しかしそれはあくまでも地元で就職した場合です。引っ越す必要がある場合、色々と支度する為の金が必要になってきます。僕はその事をすっかり失念し、贅沢なホームレス生活を楽しんでいました。
しかし、なかなか職が見つからず、貯金も日に日に減り、徐々に焦燥が募り始めます。
ホームレス生活を初めて二か月。十万円程使ってしまったところで僕は漸く危機感を抱き始めました。が、それはあまりにも遅い現状把握でした。
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