第14話 小部屋 1
売布宮がドアを開けて入室し、それに続いて安藤も中に入る。部屋の広さは四畳半ほど、真ん中にテーブルが置かれている。無機質な部屋だ。テーブルの奥に財満が座り、手前にはスーツ姿の知らない男が座っていた。確かに、こういう部屋だった気がする。
「交代しましょう」
売布宮がスーツの男に声を掛けると、スーツの男は「お願いします」とだけ言って退室する。
売布宮は財満に対面して座り、安藤はその斜め後方に立つ。財満がスウェット姿であるところを見ると、昔の安藤と同じく家で寝ていたところを連行されたのだろう。ずいぶんと困惑した表情からもそれが分かった。
「財満さんで間違いありませんね」
売布宮が確認する。
「はい」
「初めまして。私は売布宮と言います」
「あの、どこかで会ったことありませんか」
財満は売布宮と安藤の顔を交互に見ながら言った。
「さあ、どうでしょうか。あなたと話をするのは今日が初めてですよ」と売布宮。レストランなどで会ってはいるが、話をしたことはないので嘘ではなかった。
「そうですか。それで、オレをどうするつもりですか」
「今からあなたには簡単な心理テストを受けてもらいます。問題がなければ、すぐ家に帰れますよ。では早速始めます。いいですね」
「受けたくないと言ったら」
「そのときは、問題があるということなので、お互いに困ったことになりますね」
「……分かりました」
売布宮の口調から不吉なものを感じ取った財満は、おとなしく従うことにしたようだ。
部屋の造り付けの棚からHMDを取り、財満に被らせた。
「これは何ですか」
「没入型VR端末ですよ。今から、それに動画が流れます。現実に起きた出来事を追体験していただいて、その感想を教えて欲しいのです」
「はあ……、感想、ですか」
財満は露骨に面倒くさそうな顔をした。
「では、始めます」
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