第7話 カフェ 2

騒ぎを聞きつけて、バックヤードから若い男性がレジ前に来た。胸には店長のネームプレートを付けている。

「どうされましたか」と困惑した表情で、店長は財満とレジの店員の顔を交互に見る。

「どうされたも、なにもねぇよ。このアンドロイドの姉ちゃんが、コーヒーと一緒じゃなきゃサンドイッチは売れねえって言ってんだよ。どうなってんだ」と店長にすごむ。

「そういう規則になっております」

「じゃあ、ここのサンドイッチは閉店時間になったらどうする規則なんだ」

「衛生上の理由から、すべて廃棄いたします」

「あと何分で閉店になる?」


店長は腕時計を確認する。

「三十分少々で閉店時間ですが、それがなにか」

「だったら、もういいだろう。どうせあと少しで全部廃棄するんだろ。それを常連客のオレが正規の値段で買ってやろうって言ってるんだよ。捨てるなんて、もったいないとか思わないのか。フードロスの解消に協力してやってんのにさ、オレがなにか間違ったこと言ってるか」


店長はこれ以上の話し合いは無駄と判断して、レジの店員に特別にサンドイッチだけで売るようにと言って、また奥に引っ込んだ。


最初からそうしとけよ、時間の無駄だろと悪態をつきながら精算を済ませ、商品を受け取る。店を出ようと出入り口の方に振り返ると、二人の男がじっとこちらを見ている。レストランで隣にいた辛気くさい二人組だと気づき、見てんじゃねえぞと二人を睨みつけて外に出た。


車の助手席にサンドイッチを放り投げる。レストランもカフェも女もどうして話の分からない頭の悪いやつばっかりなんだろう。もっと気持ちの良い店はないのか。まあいいさ、飲食店も女も星の数ほどあるんだ。そのうち良いのに巡り会うこともあるだろう。それまでの辛抱だ。とはいえ、オレはいつまで辛抱し続ければいいんだ。我慢強い人間とはいえ、我慢の限界はあるんだぞ。


自分に言い聞かせて納得させながら、車のアクセルを踏み込み、あっという間に走り去った。

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