第20話
「英司と王女様は防御魔法と回復魔法を! 他の面々は連携して魔物と戦え!」
「分かった!」
「皆様、行きますよ!」
『応ッ!』
それを横目に蒼衣が指示と飛ばし、英司達もすぐさま行動に移す。
迫りくる魔物を倒しては距離を取り、距離を詰める魔物を倒すの繰り返し。
そして、ちょうど五分過ぎた時のことだった。
『ズドォオオオオン!!!!』
凄まじい轟音が森中に響き、次の瞬間、英司達の目の前にいた魔物たちが灰となって消えていく。
「ま、魔物たちが消えていく……!」
「多分、蓮が『特殊個体』を倒したからだろうね」
「なるほど、あの異常な数は『特殊個体』が召喚したからで、それを倒したから配下の魔物も消えた、ってことか」
「民に被害が出る前でよかった~」
そう言い、安堵の息を漏らすリーナ。
幸い、死者は一人も出ずに済んだが、何名かは負傷したので治療する必要があるため、攻略部隊一行は一度、休息を取ることになった。
「いや~きつかった~、アイツ、強すぎだろ~」
「そうなの? あんまり時間はかかっていたような気がしないんだけど……」
「配下の魔物を凄い速度で生み出すせいで、隙を狙うのが難しかったんだよ~」
森の奥から戻り、愚痴を零す蓮の治療をしていると、天川達の部隊が戻ってきた。
「……天川、なぜ、私の命令を聞かず、独断で動いたのだ?」
「魔物の数が多かったので、出来る限り倒しておこうと思いました」
「お前達が隊列に穴を開けたせいで、他の部隊に負傷者が出たのだぞ?」
「死者は出たのですか?」
「いや、出ていないが……」
「では、いいのではないですか? 傷は回復魔法でなんとかなりますよね?」
「……もういい、自身の持ち場に戻れ」
「? 分かりました、皆、行こう」
その姿に英司たちが深いため息をついていると、こちらを見つめる天川達と目が合ってしまった。
話したくもないので、英司たちは目を逸らすと、なぜか呆れた顔で天川達が近づいてきた。
「はぁ……岩本達は本当に訓練をしたの?」
そして、目の前まできた天川の言葉に、英司たちは目を点にする。
「あの程度の魔物の戦闘で傷なんかつくはずがないのに、君達は……」
「まぁ、卑怯な手を使って対抗戦で優勝したんだから、天罰が当たったんだろうな」
「ほんと、恥ずかしくないのかしら?」
天川に続き、多くの同級生が蓮と蒼衣に対し、侮蔑の言葉を投げつける。
「……なぁ、天川、一つ聞かせろー」
「何だ? 謝罪ぐらいなら聞いてやるぞ」
「あぁ、違う違う、お前なんかに謝ることなんてないから」
「なっ!?」
絶句する天川を無視して、蓮は話を続ける。
「なんで森を破壊したんだ?」
「今はそんなこと……!」
「いいから答えろ」
「ッ……! 魔物を倒すためのが最優先事項だったんだ、仕方ないだろう?」
天川の言葉が予想通りのものだったため、蓮達は大きなため息をつく。
「この森には、多くの生物が住んでいるのは聞いていたよな?」
「それがどうしたんだ?」
「なんで、そいつ等に被害が及ぶと思わなかったんだよ?」
「被害? 木が多少、なくなった程度であると思うのか?」
「……はぁ、ならいいよ、早くどっかに行ってくれ」
そう言い、手で追い払う仕草をする蓮に、天川達が顔を真っ赤にするも、
「蓮のいう事を聞いた方がいいぞ~」
「……星野、どういうことだ?」
天川の睨みに一切怯むことなく、蒼衣は今も治療を行う英司とリーナの方を指す。
「アイツらが爆発する前に、戻った方がいいと思うのは、俺だけか?」
「……皆、戻ろう」
キレる一歩手前の表情を浮かべる英司とリーナを見て、分が悪いと感じたのか、天川達は自身の持ち場に戻って行った。
「アイツらは終わってるな~」
「まぁ、あの図太さは、ある意味、尊敬ものだよな~」
「二人は、あの勇者に少し甘すぎない……?」
「そうだよ、もうちょっと、反撃してもいいのに……」
笑いながらそう話す二人に、英司とリーナは不満を漏らす。
「いや、反撃するの面倒だろ?」
「そうそう、無視していれば、別に気にならないんだよ」
「「……」」
二人の言葉に、英司とリーナは「二人がいいなら……」と言うと、治療に集中する。
そして、三十分ほどかけて全員の治療が終わった一行は、移動を再開する。
「なぁ、リーナはやっぱり、俺達の部隊にいるべきだよ」
「いえ、結構です」
「どうして? 僕達の方が、尾形達より強いよ?」
「強さで部隊を決める気はありませんので」
「そ、そっか……」
その道中、天川達は必死にリーナを勧誘していたが、その全てをバッサリと切り捨てられたり、
「なぁ、無属性魔法って、他に何が出来るんだ?」
「そうだなー、魔力を固めたりして、相手に投げつけることができるな」
「……それは魔法なのか?」
「見えない球を使った球技が出来るぞ?」
「それはもう球技ではないだろ……」
表でも交流するようになった近藤達と話したりと、様々なことがあったが、一行は遂に『奈落』が付近にある街に到着した。
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