第61話 母艦
敵機が上昇していった方角から「巨大な漆黒の球体」が姿を現していた。
その大きさは、理子が操る船と同等かそれ以上にも見えた。
球体の下部に、先程上昇した敵が吸い込まれるように消えた。
その様子から、敵の「母艦」と思われた。
「ラスボスってわけ?」
美空はモニターを睨みながら、吐き捨てた。
忽然と現れた巨大な敵は、なんの前触れもなく閃光を放った!
しかも、その太さは理子の船のものをも凌駕していた。
圧倒的な光の束は、まっすぐ都庁に迫った。
すぐさま日向は、膝を落とし回避しようと試みる。
が、閃光の方が数段速かった。
気を失いかけるほどの激痛が、右肩を襲った。
「MGO、
この瞬間、都庁は戦う術を失った……。
「大丈夫⁉」
都庁の惨状を見て、理子は叫んだ。しかし、
「理子様、攻撃にお備えください!」
鈴木の緊張をはらんだ声に前方を向く。
すでに敵の新たな攻撃が、眼前に迫っていた!
船を大きく傾けなんとか回避する。間一髪だった。
体勢を立て直すべく、一旦、後方へ大きく旋回する。
見えた。再び、敵を正面に捉える。
少し離れて見ても、その姿はやはり巨大だ。
しかし、「見えた」ということは、理子の射程である。
――敵を見る。狙いを定める。そして、撃て!
白光は、まっすぐ巨大な敵を射た、ように見えた。
が、そのまま虚空の空に吸い込まれた。
なぜなら、敵が「消えた」からだ。
いったい、どこへ!
次の瞬間、思わぬところに敵は「出現」した。
だが、その時点で理子は気づいていなかった。
なぜなら、敵は彼女の真後に移動していたからだ。
彼女がそれに気づいたのは、まさに攻撃を受けた瞬間だった。
――!
理子は、乗船以来初めての衝撃を感じた!
右後方から受けた衝撃で、船全体も左前方へと大きく押し出された。
さらにバランスを崩し、船は地面に向かって一直線に進む。
このままでは墜落する!
「理子様、機首をお上げください!」
鈴木の鋭い声と同時に、コックピットもアラートを伝えるためか全体に黄色く明滅し始めた。
理子は、急いで機首を上げるよう念じる。
船はギリギリ地上に激突せず急上昇した。
が、どこか飛行に違和感を覚えた。
振り返ると、船の右後方が大きく損傷し煙を上げていた!
違和感の正体は、この損傷による推力の減衰のようだった。
であれば、なおさらあの巨大な敵を急ぎ始末しなければならなない。
理子は再び巨大な黒い敵を、視界に捉えるとすぐ攻撃を放った。
――撃て!
極力、見た瞬間「撃て!」と念じた。
先程より、攻撃はいち速く敵に向かった。
――が、またしても敵は消えた!
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