第20話 高校前夜

 やがて、ふたりは中学に入学した。

 中学に入っても、ふたりの付かず離れずの距離感は続いた。


 互いに帰宅部だったし、友達も多くなかった。

 一緒に登下校もした。しかし、以前よりはその頻度は減った。

 ヒーローのことを話題にすることもなくなった。

 互いの体つきも変わっていき、否応なく互いに異性として意識するようにもなった。


 でも、ふたりの関係に変化が起きることはなかった。変らず、付かず離れずの幼馴染。

 周りの生徒たちからは、ふたりは付き合っているものと思われていただろうが、校内であまり目立たない存在だったふたりのことなので、特に話題に上ることもなかった。


 そうした中学での日々は比較的穏やかに、でも着実に過ぎた。

 やがて、進路選択の時期となった。

 駆はガリ勉タイプではなかったが、成績はそこそこ良かった。

 親の学費負担も考え、できれば都立の上位校を狙えればと思っていた。

 一方の日向は、さほど成績がよい方ではなかった。

 定期テストでもギリギリ赤点を回避する、そんなレベル。


 だから、駆が都立外苑高校の試験会場に日向の姿を見つけた時はひどく驚いた。

 都立外苑高校は、都立の中でも屈指の難関校のひとつだったからだ。

「あはは、みつかっちゃった」

 驚く駆に、日向はこう言って苦笑いした。

 しかし、駆が本当に驚いたのは、三週間後の合格発表の日だった。


「……駆くん……駆くん……受かったよ」


 その朝、大泣きした日向が合格通知を手に駆の家を尋ねてきた。

 駆としては、きっと記念受験的なものだろうと思っていたので内心驚いていた。

 いったい、いつから外苑高校を目指そうとしていたのだろう?

 何より、いつのまに勉強したのだろう?

 疑問符は次々浮かんだが、幼馴染の表情から努力が相当なものだったことだけはわかった。

 だから、駆は日向の頭をなで「よくがんばったな」と言ってあげた。

 大泣きする日向に「また三年間、よろしくな」と付け加えたのだった。

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