第29話 対話の架け橋
外出禁止令が解除され、市民の日常が徐々に戻りつつある中、カイはナメクジたちとの対話を再開するために一つの大胆な計画を立てた。彼はナメクジたちの酸性の雨が示すメッセージを解読し、それを理解しようと試みた。
科学チームはナメクジの放出する酸の成分分析を進め、その生化学的信号がナメクジたちの感情や環境への反応を反映している可能性があることを発見した。この知見を基に、カイはナメクジとのコミュニケーションを試みる特殊装置の開発を推進した。
装置は、ナメクジの放出する化学信号を解析し、それに基づいてナメクジの要求や状態を把握できるよう設計された。テスト運用の初日、カイとチームはナメクジが最も活動的な地区に装置を設置し、初のコミュニケーションを試みた。
操作を担当した科学者が装置を稼働させると、ナメクジたちは明らかに反応を示し、その動きが穏やかになった。装置からはナメクジの「声」とも言える生化学的なパターンが読み取られ、これがチームによって解析された。
「これは興味深い発見です。ナメクジは自らの環境変化に非常に敏感で、その反応が酸性の雨として現れていたようです。彼らが何を求めているのか、もう少しで理解できそうです。」チームの一員が報告した。
カイはこの成果を市のリーダーたちに報告し、ナメクジとのより効果的な対話を進めるためのサポートを求めた。市のリーダーたちもこのプロジェクトの可能性を認識し、研究に必要な資源を提供することを約束した。
一方で、陽妃は市民に向けたワークショップを継続し、ナメクジたちとの新たな関係構築について教育を行い、市民からの質問に答えるセッションを持った。市民たちはナメクジとの対話が進む中で、恐怖から好奇心へと感情が変化していくのを感じ始めていた。
「私たちの共生は、理解と対話から始まります。ナメクジとの間に架けられたこの架け橋が、未来へと続く道となるでしょう。」陽妃は市民たちにそう語りかけ、新しい章の幕開けを告げた。
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