第83話 クソ勇者とやる気を出した悪役令嬢、初めての共同作業です

「ゴオオオオオオ!」


 ブルーラゴンの口が大きく開いて、そこから魔力が充填されていく。


「来るぞ、ドラゴンブレスだ!」


 これはただのブレスではない。

 ドラゴンの魔力が込められた氷のブレスだ。

 ウンディーネの魔力が子供に見えるほど強烈な魔法力を秘めている。


「はあ、しゃあない。今日だけは本気出すか」


 ルビアはブルードラゴンのブレスに対して、手を向けた。

 ブラックホールリゲインを放つつもりらしい。


 大丈夫だろうか。

 あのドラゴンブレスはあのブラックホールリゲインすら上回っているようにさえ見える。

 主人公と悪役令嬢のチート。

 どちらが勝つか、予想するのは神以外には不可能だ。


「グオオオオオオ!」


「ふんぬああぁぁぁ!」


 そうしてドラゴンブレスとブラックホールリゲインが同時に放たれた。

 すさまじい光と魔力が辺りを包み込む。


 地面が大きく揺れた。

 まるで巨大地震が起きたかの如く、強烈な衝撃波が大地を動かしている。

 フィオナさんとダイアも戦いを止めて、その光景を見入っている。


 両者の魔力は互角か?


 そう思っていたが、少しずつブラックホールリゲインがドラゴンブレスを押し込めていた。


「行けるぞ!」


 勝てる。

 俺がそう思った瞬間、ルビアに向かって二つの影が近づいてくる。


「げっ!」


 それはサラマンダーとウンディーネだった。

 ブルードラゴンを援護するために、ルビアを攻撃するつもりだ。

 二匹の精霊がルビアに向かって攻撃魔法を放つが……


「させるか!」


 俺はすかさずエクスカリバーで結界を張った。


「ダメだよ。破られる!」


 エクスカリバーの結界では精霊の攻撃は防げない。前回で学んだことだ。

 だか、だからこそ、俺はそのための対策を立てていた。


「大丈夫だ。任せろ」


 俺は精霊の攻撃魔法の軌道を変えて、攻撃を逸らした。

 攻撃を防げなかったとしても、その方向を変えることは俺でも可能だった。


「悪いな、カイル。これが勇者の『復習』だ」


 一度見た攻撃は対策をする。

 勇者流の復讐ならぬ復習である。


「やるじゃん。それじゃ、これで終りね!」


 ルビアが力を込めた瞬間、ブラックホールリゲインはドラゴンブレスに打ち勝った。

 ブラックホールリゲインは、そのままブルードラゴンを飲み込んだ。

 神獣であるブルードラゴンに死という概念はない。

 だが、リキャストタイムの関係でしばらくは召喚できないだろう。

 後はカイルを押さえればいい。

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