第79話 砂漠の熱さもへっちゃらです
俺たちはドルゴン砂漠へ到着した。
周りは恐ろしい熱気に包まれている。
肌を焼くレベルの極悪な気候だ。
何も対策しないで訪れると、灼熱地獄によりどんどん体力が奪われていく。
並みの冒険者ならば数十分で死に至るだろう。
原作でのクソ勇者パーティも、カイルから逃走した先、この気候で体力を奪われ疲弊している所にモンスターに囲まれて、全滅することになった。
カイルには水の精霊ウンディーネがいる。
この暑さを緩和する対策があったのだ。
だが、俺たちに精霊はいない。
普通にこの砂漠へ入ってしまうと、原作通りに死にかけてしまうのだが……
「アビスちゃんのパンの耐熱効果のおかげで、全く熱くないな」
俺たちはアビスちゃんのパンを食べることで、この砂漠のスリップダメージを凌いでいた。
「こんな砂漠でパンとか、普通ならあり得ないんだけどね」
「ああ。でも、食ったら喉が潤うんだよな。不思議だよ。あと……美味い!」
食べた瞬間、そのパンは大量の『水分』へと変化され、喉の渇きが潤っていく。
更に体に溜まった暑さも緩和され、適度に体内が冷却される。
「原理としては、魔力の補充でございます」
どうやらこの世界は『体力』も『魔力』の一部とされているようで、魔力の低下が体力の低下と定義することもできるらしい。
アビスちゃんのパンにはとてつもない魔力が籠っている。
食べることで魔力が補充されて、体力が回復するという原理のようだ。
「パンの数が減っていたのは、間違いないんだな?」
「はい。セシリア様から、そう聞きました。恐らくニーナ様が持っていかれたのでしょう」
俺たちが持ってきたパンは特製で熱さを完全に無効化する。
だが、効力としては普段から提供されているパンにも若干の耐熱効果はあるはずだ。
ニーナはそこに気付いていたのだ。
彼女の実力ならば、モンスターには負けないだろう。
その部分を考慮すれば、取り返しのつかない事態はまだ避けられるはずだ。
だが、それ以上の脅威も残っている。
「カイルもここに来ているんだよな」
流石のニーナでもカイルが相手だと分が悪い。
急いで駆け付ける必要がある。
「ニーナ様の『魔力』を追いましょう」
フィオナさんが目を閉じて、集中を始めた。
探知能力の高い彼女が頼りだ。
「見つけました! 向こうです!」
「ありがとう。フィオナさん」
「ええ。ですが、もう一つ、更に強大な魔力も一緒です!」
「カイルか!」
すでにニーナはカイルと対峙している可能性が高い。
そのままフィオナさんの案内の元、全力で走った。
疲れたらパンを食べれば回復する。
暑さも、疲れによる体力低下も、気にしなくていい。
とにかく、全力疾走だ!
「いたぞ! ニーナだ!」
ついにニーナを見つけた。
そして、そこにはカイルとダイアも一緒にいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます