第四幕 招集(2)

 目覚めれば、休日だった。寝不足なため、これには助けられた。学校に行けるような精神状態でもない。母親と当たり障りのない会話を交わし、朝食を無理やり詰めこんだあと、七音は自室へ飛んで帰った。ネットを立ちあげ、高速で巡回する。眠ったことによって、深刻な混乱は収まっていた。そのため、彼女はようやくある可能性に気がつけたのだ。


 審査用のヴァーチャルの舞台。そこに集められた面々の肉体はアバターだった。


 七音自身も、ペン山ペン次郎と化していたのだ。つまり、現実において、失格者は殺されてなどいないのかもしれない。そうであれば、悪趣味すぎる演出ではあったものの問題はないはずだ。七音は音楽界隈のアカウントを辿っていく。だが、『日ノ上翠』と『柊ロコ』に関する、死の話題はなかった。ほっと、七音は胸を撫でおろす。


(やっぱり、誰も首を吊られてなんかいないんだ)


 そう、七音は頷いた。考えてみれば当然だ。新たな歌姫を選ぶオーディションで、脱落者の首を吊るなど意味がない。あまりにも残酷で、馬鹿げている。常識的な結論がでると、すっかり気が抜けた。検索を止めて、七音は自身のアカウントのホーム画面へともどった。


 瞬間、ソレは表示された。


「……………………えっ?」


 七音は、日ノ上翠の所属事務所の公式アカウントを以前からフォローしていた。そこが、書きこみを更新したのだ。文章はない。画像だけの投稿だ。七音は震えた。イヤだ。見たくない。怖い。嫌な予感がする。それら一切の負の感情を飲みこんで、七音は画像をクリックした。白い背景に丁寧な文字が並べられている。言葉も多く尽くされていた。だがそのほとんどは、七音の頭には入ってこなかった。一行目に、彼女の視線は釘付けにされる。


『弊社所属のクリエイター日ノ上翠は逝去いたしました』


 同時に、七音は思いだした。

【時計兎】は言っていたのだ。


 ――――審査後、あなた様は元の肉体に帰られます、

 ――――ここで得た結果のすべても、正しく現実へとフィードバックされますとも。

 ――――経験は肉となり骨となる。恐れることなどございません。



 フローリングの床の上へ、七海は勢いよく吐きもどした。

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