第20話 鷹の爪
息を切らせながら公衆トイレに駆け込んだ朝倉和也は、背中をトイレの壁に預けて一息つく。汗が流れ落ち、心臓の鼓動が耳に響く。
しかし、逃げることで解決するわけではない。朝倉和也は決意を固め、次なる行動を考え始めた。彼はポケットからスマートフォンを取り出し、『BOOKQUEST』を起動しようとした。
しかし、画面には何も映らない。アプリが起動しないことに朝倉和也は動揺を覚えた。彼は何度もアプリを起動しようと試みるが、画面は依然として真っ暗だった。
「これでは…」朝倉和也は苦悩の表情を浮かべながら、次なる行動を模索し始めた。
その時、外から神野悪五郎の足音が聞こえてきた。公衆トイレのドアが揺れ、神野悪五郎の気配が近づいてくる。
朝倉和也は背筋が凍るような感覚を覚え、「まだ…まだだ」と自分に言い聞かせる。神野悪五郎を倒さなければ、先に進むことはできない。彼は剣を握りしめ、トイレの中で待ち構える。
公衆トイレの外から聞こえてくる足音が近づく中、朝倉和也は緊張の中でトイレの中に身を隠した。しかし、外からの足音は急に止み、静寂が戻ってきた。
やがて、ドアがゆっくりと開かれた。しかし、トイレの外に立っていたのは神野悪五郎ではなかった。代わりに、地元の警察官が現れ、不審な動きをしている朝倉和也を見つけたのだ。
「あなた、トイレに閉じこもっていましたか?」
警察官が尋ねると、朝倉和也は動揺した表情でうなずいた。
警察官は朝倉和也を安全な場所へ案内し、彼に状況を説明した。何者かが古本屋で騒ぎを起こしており、その報告を受けて警察が駆けつけてきたのだという。
朝倉和也は安堵の表情を浮かべ、「ありがとうございます。でも、もしもう一度あの場所に行くことができれば、私は…」と口ごもった。
警察官は理解を示し、「安心してください。私たちは現場を確認します。もし危険があれば、すぐに通報してください」と応じた。
朝倉和也は心の中で神野悪五郎への決意を新たにし、次なる行動を考え始めた。
越前市の静かな町にある古い道場で、那須与一の末裔である老師が弓道の修行をしていた。朝倉和也はその道場を訪れ、那須流の弓術を学ぶことを望んだ。
老師は静かな佇まいで、弓を構える姿勢や矢の扱い方など、基本から教え始めた。彼の技術は確かで、一挙一動に那須与一の血筋を感じさせた。
そして、最も重要な瞬間が訪れた。老師は『鷹の爪』という那須流の必殺技を教えることに決めた。
「この技は、敵の動きを見極め、一瞬の隙間を突いて矢を放つものだ。相手の意図を読み取り、的確に命中させることが肝心だ」と老師は説明した。
朝倉和也は真剣に修行し、鷹の爪を体得していく。弓道の練習は日々の努力と集中力が必要だが、彼は那須与一の血を引いているだけに、素早く技を習得していった。
修行の日々が過ぎ、朝倉和也は鷹の爪を自在に操れるようになった。その矢は的確に命中し、力強さと精度を兼ね備えていた。
「あなたは立派な那須与一の末裔だ。この技を使い、戦いに挑むがよい」と老師は誇らしげに微笑んだ。老師は朝倉和也の叔父に当たる人物だ。
朝倉和也は感謝の意を表し、新たな力を手にして越前市を後にした。彼の心には、那須流の弓術という強力な武器が宿っていた。
夜の闇に包まれた越前駅近くの路地裏。朝倉和也は一人、決意を胸に立ち尽くしていた。彼の目は燃えるように熱く、汗が額から流れ落ちる。
そこへ、不気味な気配が近づいてくる。それは神野悪五郎だ。彼の影が路地の奥から姿を現し、冷たい笑みを浮かべる。
「朝倉和也、やっとここまで来たか」と神野悪五郎が口を開いた。「この戦い、終わりにしようじゃないか」
朝倉和也は黙って頷く。彼の手には決闘の証となる剣が握られている。二人は対峙し、死の静寂が空間を支配する。
「準備はいいか?」神野悪五郎が問いかけると、朝倉和也は深呼吸をして返答する。
「準備はいい。でも、この戦いで誰が勝っても、必ず終わりが来ることを忘れるな」
神野悪五郎は冷笑し、「そうだな、それがこの世界の掟だ」と言い返す。
そして、二人は決闘を開始した。剣が交錯し、血潮が飛び散る。彼らの戦いは、ただの闘い以上の何かを象徴しているようだった。
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