第六天魔王の軍師
大野半兵衛
第1話 貴方は誰?
■■■■■■■■■■
第1話 貴方は誰?
■■■■■■■■■■
ここが朽木谷か。まさに谷合の地域である。
この朽木は、歴史上の人物である複数の足利将軍が関係している地域になる。
歴史好きな僕にとって、いつかは訪れたいと思っていた場所なのだ。
室町幕府第十一代征夷大将軍足利義澄、同十二代征夷大将軍足利義晴、同十三代征夷大将軍足利義輝。
室町幕府の権威は十代将軍の頃から、いや、第六代征夷大将軍足利義教が暗殺されて以降、もっと言うと第三代征夷大将軍足利義満が亡くなってからガタガタだった。
そんな足利将軍家に忠義を示したのが、朽木氏だった。京を追われた足利義澄、義晴、義輝と三代に渡って何度も匿ったのだ。
朽木氏の所領は決して広くないし、裕福でもない。石高は一万石もなかった国人領主だ。それでもこの朽木という土地は若狭と京を繋ぐ若狭街道(現代では鯖街道とも呼ばれている)が通っており、交通の要所であった。
そして京に近く、狭い谷合にあることから攻めにくい場所でもある。
将軍が逃げるのはさすがに引くけど、それでもこの朽木で歴史が動いていた時期があるんだよね。
それに戦国武将として超がつく有名人の織田信長が朝倉攻めを行った際に、浅井長政の裏切りに遭った金ヶ崎の戦いで逃走したのを手助けしたのも、この朽木谷を治めている朽木家だった。
僕は理系の大学二年生。来年は大学三年になるから、就職活動が忙しくなる。しばらくどこにもいけなくなるから、以前からきたかったこの朽木にやってきた。
朽木陣屋跡は北川という小さな川が、安曇川に合流するそばにある。
朽木グランドというちょっとしたグランド(運動場)があり、時代の移り変わりを実感する。
朽木陣屋跡から北上すると、織田信長が身を隠したと伝わる『信長の隠れ岩』という場所がある。ゴツゴツした岩を登り、三角形の洞窟のようなものを見た僕は感極まった。
ここに信長が隠れて、朽木元網に敵意があるかないかを確認したらしい。その頃の信長の疑心暗鬼の気持ちが感じられるようだ。
その時だった、僕は岩から足を滑らせて転んでしまった。頭を強かに打った僕は、その場で気を失ってしまったのだ。
再び気づいた時、まだ日が高かった。
気を失っていた時間は大したものではなかったようだ。
血は流れてなく、たん瘤程度で済んだようでよかった。
「しかしヘマをした。最近サボっていたのが悪かったかな」
歴史好きが高じて古武術を始めたのは、中二の頃だったか。あの頃は中二病などと友達から言われていたっけ。
おかげで護身術程度は身につけている。ただ、最近は稽古をしていなかった。大学生になって遊び歩いたのがよくなかった。反省して、帰ったら稽古をしようと思う。
とりあえず、戻りますか。
頭を打ったから、ゆっくりいこう。
たん瘤がたまにズキズキする。せっかく歴史的な場所を訪れていい気分だったのに、最悪だよ。
ガタッ。
「つっ!?」
僕は呆然と立ち尽くした。
目の前には、黒い甲冑を身につけた武将らしい人物がいる。
「何者じゃ!?」
「え、あ、僕は
大川ドラマの撮影なの? そんな立札とかなかった気がするけど?
「交野……朽木の者か?」
「あ、いえ、僕は観光中なんです」
って、なんで答えてるのよ、僕。ドラマの撮影なら、僕は邪魔だよね。早く移動しよう。
「面妖な着物じゃな。南蛮のものか」
「え、南蛮……? いえ、日本のものですけど……?」
なんだろう、この違和感は。
「「「殿!」」」
その武将の後ろから出てきた、これまた武将たちが刀を抜いて僕に向けた。
「貴様、何者か!?」
「浅井の手の者か!?」
「えええ!?」
それって本物の刀ですよね! 僕はホールドアップした。きっと真っ青な顔をしていることだろう。
「よせ、浅井の者ではないはずだ」
「しかし……」
「あの顔を見よ。武士ではない」
「忍やもしれませぬ」
「あんな間抜け面した忍などおらぬであろう。それに忍がこのような面妖な着物を着て目立つとも思えぬ」
僕、地味にディスられてる? でも僕を庇ってくれた武将のおかげで、刀は納められた。助かった~。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます