正しい聖女の造り方〜目指すは完全弱愛ルート〜
よくいる凡人
第1話 プロローグ
「夢も希望もすべてこの私の導く方にある」
何もわからないまま言われた通りに台本を読み上げた。辺り一面に轟くような歓声が広がった。どうしてこうなった。
何度も問おう。
ドウシテコウナッタ、、問題は少し前に遡る。
皆さんは神を信じるだろうか、
信じているなら何故今助けてくれないのだとか、幾分とまぁ身勝手な理由で非難して、調子がいい時だけ縋り付く名ばかりのものに過ぎないのかもしれない。いまその指導者に私はなっている。俗にいうトラ転だ。
そうトラックに轢かれた。
熱湯がぶちまけられたような熱さが瞬間的に身体を包み込みあまりの痛みに気を失った。その途端これだ。
いきなり得体の知れない魔法陣の上で呆然と立っていた私はあれよあれよという間に、神だの、プリンセスだの、言われここまで担ぎ上げられスピーチの台本を渡されたのちここにいる。目の前にはなにやらキラキラしい人間が微笑みながら私をみていた。
前世で一般人が目にかかることはないような美貌である。美しい金色の髪色に目が覚めるような青、目を囲むようにのせられているアイシャドウは薄紅色で、絵に描いたような王子だ。へー、異世界にも来ると男性も普通にメイクするんだなぁなどと本当にどうでもいいことを思った。
ふと綺麗な顔と目が合う。
何か嫌な予感がして目を逸らした。
美しいルージュに彩られた形のいい唇が私に向かってこう言った。
「キミにはこの世界にある、12の宗教を纏め上げる、素晴らしい聖女になって欲しいんだ。そう、この世界はあまりにも宗教に溢れてるからさ。いっそのこと国教会を作ってさ、聖女に祭り挙げようと思って、キミにはそれらを一致団結させてほしいんだ。」
え?12?いや、本当に何がどうなったのか分からなすぎる。もっとほら、このテイストの話って、こんなアグレッシブな始まり方ではなくって貴方が聖女だとかなんだとかいって誉めそやしてからの裏切りだとか、せめて持ち上げてから下げるパターンでは?あまりにも展開が早過ぎる。
あまりの混乱に何も言えないでいると彼は何をどう思ったのか知らないが、私がこのことを承諾してくれたと解釈したのか、、ほっとした顔をしてこう言った。
「いやー、うんうん。断られたらどうしようかと思ったよ。承諾してくれてよかった。ホント。ただ口がついた労働力なんて五月蝿いだけだからね。我々は労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった。なんてね、ハハ。
あ、なんか騎士とかつけておくからさ、いい感じに纏めてよ。因みに異世界人だとか言ったところで身寄りも何もキミは無いんだから、ただ断ったところで労働力として活用させてもらうことには変わらないから。よろしくね。」
王子らしき人物は天使のような顔でそう言った。しかし、内容は顔の威力が上がったとて隠せない、悲しくなるくらい残酷な殺人予告のようだった。きっと死刑囚の罪人は自分が罪を犯した時、その判決を言い渡された瞬間こんな絶望感をあじわうのではないか。
だがまぁしかし、悲しいかな、私はそんな罪を犯す予定もなかったし、無論犯すつもりもなかった。なんなら被害者なのにもかかわらずこれだ。
この世界はクソだ。
先ほど言葉を訂正しよう。トラ転からの異世界召喚、呼んだのは王子の顔をした悪魔だったらしい。
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