解1-2-10:彼女なりのエール
早速、俺は手を握ったり開いたりしたあと、シャドーボクシングの真似事をしてみた。さらに一歩前へ踏み出したり、軽くステップしてみたりする。
それに対し、ラプラスターは寸分違わぬタイミングと動きを見せる。
「すごい! なんとなくイメージはしていたけど、実際にやってみると想像以上の一体感だ! ラプラスターが自分の体のように反応する!」
『そのように考えていただいて問題ありません。ヤスタケ自身に出来ることはラプラスターにも出来ます。その上で飛行や潜水、宇宙を含めた異空間への適応、攻撃からの耐性など独自の能力も保有しています』
「うん、確かにこの操作性は驚きだし、慣れるのも早いかも。これならなんとか戦えそうだ」
『――ヤッくん!』
俺がラプラスターの操作性に感激と興奮を覚えていると、それを制するかのようにチャイが声をかけてくる。
ディスプレイに映し出された彼女は、何か言いたげな様子だ。
「ん? どうした、チャイ?」
『どんなに優秀な機械でも、最後に頼りになるのは使い手の『心』だよ。それを忘れないでね』
「……そうだな、どんなものでも過信しすぎるのは良くないもんな」
『そういうわけだから、簡単には諦めずに根性で戦いなさいよね。もちろん、無理しない範囲でって話だけど』
「なっ!? アドバイスをしてくれたのかと思ったら、そうじゃないのかよっ! プレッシャーかよっ! ひでぇ……鬼だ……」
『なぁに言ってんの! この程度で鬼とか、冗談でしょ? むしろ“発破を掛けてくれてありがとう”って、感謝されてもいいくらいだよ』
チャイは呆れ返ったような顔をして、肩をすくめた。
確かに俺にはちょっと浮かれていた面があったし、おかげで気は引き締まったけど、もう少し気遣った言葉にしてくれてもいいのになぁとも思う。俺に対して
ははは……なんだか涙が出てくる……。
「そうですか、そりゃアリガト……。ま、なんとかやってみるさ」
『……うん……がんばれ……っ』
「えっ?」
『っ!? なっ、何でもないよっ! 何も言ってない!』
チャイは
しかもそれはぞんざいな感じじゃなくて、本当にエールを送ってくれているような優しい気持ちが込められていたような……。
…………。
意識したら俺まで顔も耳も熱くなってきた。なんだか照れくさい。
――と、その直後のことだった。
コックピット内にけたたましい警報音が鳴り響き、ディスプレイのひとつが赤く点滅を始める。そこには『WARNING』と表示されている。
何が起きたのか具体的には分からないけど、非常事態になったのは間違いないらしい。
途端に俺の気分は冷や水を浴びせられたかのように一気にクールダウン。警戒心を最高レベルに引き上げて周囲やレーダーに注意を向ける。
『ヤスタケ、2時の方向に
「くっ、いよいよかっ!」
ティナさんに示された方向に全意識を集中させ、不意な先制攻撃に備えて身構えた。そして本当に30秒後、飛行してきたソイツは勢いよく地上に降り立つ。その際の振動はラプラスターにも伝わってくる。
「あれが
緊張して俺は思わず唾を飲み込んだ。
視線のすぐ先で、敵意をむき出しにしているのは異形の怪物『
また、見た目は成層火山を縦長にしたような形状をおおむね保っている感じで、そこに赤く輝く逆三角形の目がふたつと、左右に裂けるほどの大きな口が付いている。なんて気色が悪いんだろう。
(つづく……)
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