解1-2-9:戦闘形態(バトルモード)へ転換(チェンジオーバー)!

 

「っ!? へぇ、戦闘形態バトルモードは人型なんだ!」


 ラプラスターの変換は想像以上に目を見張るものがあった。


 車体の一部が分割・併合したり、既存のパーツが変形して置き換わったり、空間の狭間から新たなパーツが現れたり――。



 そんな大規模な動きを重ねていくうちに、ラプラスターは人間を模した巨大なロボットへと変換されたのだった。威風堂々いふうどうどうたるその姿は、格好が良くて頼もしさも漂っている。


「このロボットを俺が動かすのか……」


 こうして変形が完了したラプラスターを実際に目の当たりにしてみると、動かしてみたいという興味とこれから敵と命を賭けて戦うのだという恐怖が混在して思わず体が震える。



 期待感と不安感が拮抗し、胸の中がゾワゾワとして落ち着かない。



 なお、ディスプレイに表示されているデータによると、全高は約10メートル。バスに似た形態の通常形態デフォルトモードは全長が約7メートルだから、それを立ち上がらせた上でさらに少しだけ大きくなったということだ。


 ボディカラーは空色や白色を基調としていて、これは空気のある場所での空中戦を意識しているのだろう。


 ただ、頭部などには赤色、胸の辺りに輝くエンブレムには黄金色などピンポイントで数種類の色がアクセントとして使われているので、単調というわけでもない。



 全体的な形状は、融合前のバスの車体が丸みを帯びたデザインだったこともあって戦闘形態バトルモードでも各所に球や円、弧といった印象が色濃く表れている。


 特にボディには翼が付いていないため、なおさら『丸』のイメージが強調されている感じだ。


 もっとも、外観のほとんどは別物に変換されてしまっている関係で、バスそのものを想起させる部位は極めて少ない。



 ちなみに翼がなくても飛行や浮遊が可能ということは、反重力装置のような俺たちの世界では実用化されていない未知の仕組みを使っているんだと思う。



 まぁ、ラプラスターは内部と外部の空間がそれぞれ独立して存在しているくらいだし、何があってもそんなに不思議じゃない。そもそも俺たちの世界の科学や理論なんかじゃ説明できないことばかりが目の前で起きてるわけだしね……。




 ――さて、とりあえずラプラスターを地上に降ろそうかな。操作に慣れていない段階で空中戦というのはハードルが高すぎるから。


「ティナさん、夢幻魔むげんまとは地上で戦っても問題ないですよね? 空中だとまだ動きの感覚が掴めないし、下には注意が向きづらくて死角になってしまいそうなので」


『はい、合理的な判断だと私も考えます。ヤスタケの戦いやすい環境に置いていただいて構いません』


「ありがとうございます。もちろん、地上で戦うにしても地面の下から攻撃を受ける可能性もゼロじゃないので、油断は出来ませんけどね」


『その心構えを推奨します。どの方位から敵の攻撃があってもレーダーに反応が出るとは思いますが、攻撃の接近スピードや私たちの反応スピード、レーダーを阻害する特性がある武器など、様々な要因によって確実に迎撃または回避が出来るとは限りませんので』


「では、地上へ降ります」


 俺は自身がゆっくりと降下するイメージを頭の中で思い浮かべた。


 するとラプラスターはその通りに動き出し、外の景色もどんどん高度が下がっていくように見えている。ただ、体には重力や気圧などの変化はほとんど感じられない。


 ということは、高速で空中を移動したり宙返りをしたりしても俺の意識や肉体には影響が出ないということなのかもしれない。もちろん、周囲の景色は激しく変化して見えるだろうから、乗り物酔いをする可能性は否定できないけど。



 その後、俺はラプラスターを無事に地上に降り立たせ、まずは手足を動かしてみることにした。


 これは操縦桿そうじゅうかんやレバーなどを操作するというわけではなく、自分の体を動かせばいいだけ。精神の同期シンクロニズムのおかげでそうした直感的な操作性となっている。操縦に難しい技術が不要なのはありがたい。



(つづく……)

 

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