第3話 悪夢と秘密

「ここは、何処だ?」


目線の先には黒く染まった満月、何故か分かる、俺の腹部に風穴が空いている事を、痛くも、辛くも無い。

他人事みたいだ…だが分かる、俺の事だ。

知ってる顔が泣きながら覗き込む。


「クロ?なんで泣いている?」


クロには聞こえてないのか?…いや、今、俺は喋っていないのか、…これから、死ぬのか?

あ、寒いな…


「キラ、お〜い、キ〜ラ〜」


あぁ誰かが呼んでいる。

視界が遠くなる中、俺は手を伸ばしクロの頬に流れる雫をボロボロに折れた手で拭う、


「また会おうな…クロ、」


誰が喋った?俺じゃないのは確かだ。

あっ、暗くなった。


「キラ〜起きろ、」

「うぅん〜」

「あっ、やっとおきた。」


俺は寝ていたのか、まだ頭がぼ〜とする

あれは何だったんだ?…ん??って、何かあったけ?


「君まだ寝ぼけてるのかい?」


俺は無意識にクロの頬を触っていた…何故?

俺にはわからなかった。


「はぁ〜やっぱり君、寝ぼけてるな、」

「あっ、ごめん。」


俺は起き上がり、背伸びをした後、荷物を持つ。


「よし、旅の再開だ。」

「ちょっと待ってくれキラ、」


アランが少し焦った顔で詰め寄ってきてコソコソと話す。


「あの人は誰!?説明あるかと思って黙っていたけど、な~んも無いからびっくりしたんだけど!?」

「しかもそのまま旅に行こうとしてるから俺の事、忘れてると思ってもっとびっくりしたぞ。]

[いや、旅の最中に言おうとしてたけど?]


アランはさらに考えてる。


「う〜ん?俺、仲間になるって言ったけ??」

「うん、全く心当たりが無い。」


「何言ってるんだアラン、言わなくたって」

「もう俺達はもう仲間だろ?」


アランの肩を掴みキメ顔をする。

アランは一瞬びっくりした顔をしたが、

すぐに笑顔に変わった。


「そう言う事か、よし!わかった、」

「キラとそっちの白髪の人、これからよろしく頼む!」

「あぁ、よろしくなアラン!」

「まぁ、よろしく、」


そしてアランが仲間になった。


「で、キラ、そっちの人は?」

「あぁ彼女の名前はクロって言うんだ。」

「へ〜クロって言うのか、よろしくなクロ、」

「……」

「なんかクロさん、冷てぇな、」

「そうかな?普通だと思うぞ?」

「えぇ~そんなもんなのか?」


そして三日間、歩き続け…


「なぁキラ少し聞きたいんだけど、」

「何だ?」

「ちょとな、クロの事だけど、何で毎日夜になると、どっか行くんだ?何か知ってるか?」


そう言われると、毎日夜になると消えて、朝に戻って来る、何かある事は確かだ、少し聞いてみるか。


「クロちょといいか、」

「何だい?」

「いつも夜にどっか行くけどどうして?」


するとクロは不安そうな顔で何かを言いかけたが、口が少し震え、目をそらした。

言わないのか、いや、そんな感じではなくが正しいのか、それはクロにしか分からない。


「今は言わない、かな、」


クロは下を向き、立ち止まる。

俺達はまだ、クロの事を知らない。

けど、今の俺が出来ることは…


「うん、言わなくていいよ、」

「クロが自分で言いたくなる時まで、」

「待つよ。」

「ありがとう。」


クロは顔を上げ、微笑み、歩き出す。

まだクロと少し距離がある。

でも焦ることは無い、ゆっくりで良い、そう、ゆっくりで、まだ始まったばかりの旅路だ、いつか知る時が来るさ。


「よし、行こう。」

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