ep.6 戦後処理

偵察部隊からの情報によると、敵の村が本土決戦に備えている様子はないらしい。


この前の戦闘で戦える若者の六割が死亡、そして残り四割の半分が重軽傷を負っている。


それで男手が不足し、農作業すらまともにできていないらしい。可哀想に。




こうとなっては我々がしっかり責任を取らなければな。敵が早期降伏をするよう工作をするとしよう。




とは言っても、言葉は通じないので降伏勧告なんかよりもっとわかりやすい方法を取る。


本当は戦略爆撃で脅したほうが楽だが、焼け野原では占領したとてなんの意味もない。


それに軍の再編も済んでいない以上、ここは穏便に済ませるべきだ。




目の前に前線基地を作り、そこで肥料として骨粉を撒き、近代的な農業をするのだ。


勿論その骨粉は先の戦いで戦死した敵兵...これ以上はやめておこう。


そしてその作物を敵の村に投石機で届ける。


それをしばらく続けて完璧に依存させた後、堂々と武装した大使を派遣して何とかコミニケーションを取り、講話する。




このいい加減な作戦は案外うまく行った。


敵国の子供がすぐ日本語を喋れるようになったおかげで、スムーズに交渉できた。




とはいえこの時代負けた国は虐殺か奴隷化の2つに1つが主流らしく、それを否定するのに苦労した。


そのためにスコップやツルハシ、桑なんかも供与し、水不足に備えて小さめのダムなんかも作ってやった。




勿論1つずつ交換条件付きだ。


栽培した穀物の内、国民を養ったうえでの余剰分殆どを徴収するといったことを始め、我が国が他国と戦争になった際、土木工事などの後方支援に無理のない程度の労働力を派遣させること、また供与した道具で採掘した金属の半分を徴収することなど、植民地ほどではないが傀儡国よりちょっと多い、まさに属国ぐらいの条件を飲ませた。




一応現世の国際法には土木工事以外ギリギリ違反してないぐらいの内容にしてある。


国連が無い以上守る必要もないんだがな。




占領した村では鉄を教皇国とかいう国から輸入しているため、これで鉄を利用した兵器を作成できる。


今回の国は800人程度しか住んでいなかったが、(戦死したもの除き)これでもっと巨大な大国にも対抗できるだろう。




また、講話する時に国名が無いのではマズイ、ということで我々の国名を大日本帝国に決定。


占領した傀儡国の名前はめちゃくちゃ言いにくく日本語にできなかったので、大日本帝国を名乗る我々の傀儡国というのもあり満州と命名した。




原住民たちも日本語では自国を満州と呼び始めている。


今では子供の殆どが日常会話ぐらいできるようになってきたのだ。




そして、日本を名乗るからには武士道に反する行いは生徒会の粛清で最後にしなければと思い、満州に彼らだけの議会を作った。


軍事、外交を除いた全権をそこに与えるつもりだったが、今まで長老とその補佐数人にすべて任せていた民衆が議会をしっかり機能させるには時間がかかりそうなため、今現在はそこまでの権限を与えていない。




ちなみに生徒会の連中は占領国の高等弁務官事務所で働くことを条件に開放した。


拘束している間もしっかりと人道的でかつ物資面に関しては一般国民より良い扱いをしていたため、寧ろ看守のほうがよっぽど可哀想なほどだった。それも自分が信用する人のほとんどが男だったため、女子が多い生徒会の監視には結構気を使い大変だったらしい。




しかも陽キャ連中だからなのか...要求がひどい。


毎日2,3回シャワーを浴びさせろだの、運動のために部屋を広くしろだの、床が硬いから敷き布団を二枚重ねにしたいだの。


これでもまだマシな方で、看守をイケメンにしろとか、粛清対象じゃなかった彼氏と合わせろとかふざけたこと言いやがった。


後者は彼氏も牢獄にぶち込んでやろうか? と言ったら黙ったが。




だが最後の2つ以外は苦労の末なんとかしてやったぞ...


でもマジで戦時中に仕事増やすな!この非国民が!


一方男子の方は闘争に負けたらそんなもんだろ、そっちの好きにしろという感じで、せいぜい飯増やせ! ぐらいで大した要求もしなかった。めちゃくちゃありがたい。




しかし、苦労の甲斐あってか女子のほうが我軍への反感はかなり少ないようだ。


というか無いに近い。


隠しているだけかもしれないが、そうだとしても満州送りでは何もできんだろう。


今更両国の友好を崩すのは至難の技だろうし、社畜として疲れ果てるだろうから何かを企むこともできん。


せいぜい中堅階級でせっせと働くんだな、かつてのスクールカースト上位の者よ。ハッハッハー...


おっとまた武士道に反しそうだ。控えよう。




現在、魔法を調査するのも兼ねてかなりの兵力を駐屯させているが、満州の兵は殆どを先の戦いで壊滅させてしまったため撤収後の治安維持が心配だ。


別にクロスボウとかを警察的な存在に供与すればいい話ではあるのだが、万が一反逆されたときに流石に高性能なクロスボウを使うような敵とは戦いたくない。




そんな中、




「治安維持に最低限使えるぐらいのモンキーモデルにすれば良いじゃないか」




と、我が国の高等弁務官が提案してきた。


早速それを受け入れ、弾丸を弱々しい木製のものだけにし、工作精度も落とし、携帯しやすくストックも外し銃身も縮めたピストルサイズにしたことで、とても長距離では通用しないような代物に改造されたモンキーモデルを配備。


これでもコッキングするだけでマガジン分はスムーズに撃てるし、弓なんかよりよっぽど強いぞ。


ちなみに工作精度をマトモにし、APFSDS弾に対応させたものは自分含め秩序維持委員会高官が護身用に所持している。




たがこれを供与する必要も無かったかもしれない。


結局畑を襲う鳥を追い払うことぐらいにしか使い道が無いほど平穏らしい。


某カンボジアの独裁者が原始共産主義を唱えたのもわからなくもない気がするな。


...まぁあれの結果は大失敗だがな。




ただあっちは文明自体がそのまま消滅していなかった一方、こっちは文明全てを再現できているわけではないのでその結果は変わるかもしれない。

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