終章

俺達は現地の温泉旅館で一泊する手はずになっていた。

つばめが予約した部屋には内風呂が露天になっており二人きりで入れる。


改めて目の前にすると、照れと緊張が混じった感じでつばめは

「ちょっと頑張りすぎたかな、あははは・・・。」


その気持ちはわかるし嬉しかった。

「んにゃ、忙しい中つばめが一生懸命選んだんだ、素直に嬉しいですよ。ありがとう、つばめ。」


赤面しながらコクコク頷くだけのつばめを見ていると可愛いし、彼女になった嬉しさが込み上げてくる。


とりあえず景色を堪能しつつ、一服しお互い気分を落ち着かせる様にした。


「昔から夢見ていた事が叶って良かったな、つばめ。」

俺はお茶を啜るつばめに話し掛けてみた。


「正直あの子に乗るまでどこか緊張はあったんだ。隠したままだったし、途中でそっぽを向かれてもおかしくないし。でもずっとあたしの事を最優先にしてここまでして貰って夢叶った。そして隣にいるのがあなたで良かったって心底思っている、ありがとう。」


優しい笑顔をこちらに見せるつばめ。

この笑顔をこれからも絶やさず過ごしたいと思いながら口にする。


「つばめの笑顔が見れたのが俺は嬉しいんだよ、その笑顔を見続けたいからずっとそばで見させて欲しいな。」


つばめはまたも顔を赤らめながら、うんと返事をした。


「今日までは小さい頃の夢、明日以降はどんな風に過ごそうか?と、今回の計画を練りながら考えていたんだ。あなたとどんな未来を作りたいか?とかね。」


仕事に忙殺され、今日まで恋人らしい事も出来なったので自分の方でもそこに至っていないのが実情だった。


「あたしも恋人らしい事もしていないので正直具体的なものは何も浮かばなかった。 でも二人で一緒に考えながら離れない様にしたいってのは根底にあるんだ。二人で未来へ続くレールを走りたい・・・的な?」


そこでレールが出てくる所がつばめらしいと思いつつも、言わんとしている部分は俺も同じなので笑みを浮かべながらウンウンと頷く。


「どんな事が待っているかわからないけどさ、お互いを大事にしていきたいよね?」


「そうだな、俺が!私が!が始まってしまったら相手を思う気持ちが無くなっているだろうからそこは避けたいと俺も思うよ。」


ぼんやりで具体的なものは浮かばないが、二人とも同じ思いを忘れないなら大丈夫な気がする。


「この先のイメージはまだ湧かないけど、まだ見ぬ未来へ二人が進む先を翼が導いてくれれば・・・的な?」


「語尾真似すんなしw まぁそうだよね、あたし達今日が初日だもんね。この先は二人で一緒に進んで行こうね。」


「にしてもレールに翼じゃなんか合う様な合わない様な・・・。 言いたい事はお互い同じなんだろうが持ってくるものが違い過ぎるよな、俺らw」


「あたしなんかはレールに翼だと山形新幹線になっちゃうけどねw」


「つばめとの話なのにつばさとはこれ如何に?」


「お? 初日でもう、つばさへ浮気か? DTなのにやるじゃねぇか、ケンカか??」


どういう理論でそこにたどり着くのかわからんが、つばめはわかりやすく頬を膨らませ拗ねている。

どんぐりを目一杯頬張っているリスの様でそれも可愛い、今度飯食う時に頬張らせてみようと考えながらつばめの頬へ手を伸ばし左右からそっと力を入れる。

プシューと間抜けな音が出たせいか二人で顔を見合わせ笑ってしまう。


「バキバキDTにそんな甲斐性はござんせんよ、安心したまえw まぁ英語にするとRail and wing  だな。なんか意味不だが響きがいいからそれでよくねぇか?」


うーんと思案顔になりつつ

「ま、そだね!二人で意味が分かってりゃいいもんね! でもandよりofでRail of wing の方が響きがいいかも? レールに翼がなんて空へ伸びていく感じで銀河鉄道やシン○リオンみたいじゃん!」


シン? なんだって? まぁいいや、後でググろう。

銀河鉄道は宮沢賢治の小説や松本零士の漫画で俺も知っているのでイメージしやすい、二人して妙に納得したのでこれで良しとしよう。


こうして俺達は日中は楽しく過ごし、夜はお互いの初めてを相手に捧げ愛を深めた。


翌朝、隣で静かな寝息を立てるつばめを眺める。

つばめの全てが好きになった事に改めて幸せを感じていた。

そっと前髪を撫でる様にかき上げ、額にキスをして床から出る。


朝日を浴びつつ、珈琲とタバコを味わいながら思う。

これから九州旅行も計画するとして今後は関係を深めながら同棲とかしたいなと。

片時もつばめと離れたくないという願望が沸々と出てきた。愛しいつばめと過ごす時間はさぞ幸せであろうと。


Rail of wing 二人にしかわからない言葉、これが生まれた時の事をお互い忘れなければきっと俺達はうまくいく。

根拠は無いが不思議と絶対的な自信があった。


自信に満ちた俺は珈琲を飲み終え、つばめを起こしに戻った。

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Rail of wing 不破 侑 @you-fuwa

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