不登校の僕が学校に行く条件

にゃんちゅうだ!!

「学校に来たらおっぱいが触れるとしたら?」

「逆にどういう条件なら学校に来る?」


 虚を突かれたような気分になった。


 新学年が始まって一週間。


 七日連続不登校の俺の部屋にやって来たのは新しい担任の先生。


 名前は綿貸わたがし先生という。


 スーツ姿にセミロングの栗色の髪の若くて可愛い先生だ。


「どういう条件って、何ですかね」


 先生は口元に手を当てて思案顔。


「んー例えば、学校に来たら百億円あげるって言われたらとか?」


「そりゃ行きますよ。でも百億円もらえないですよね」


「うん、もちろんあげない。藤井くんは中学生だから知らないかもしれないけど、学校の先生ってそんなにお給料高くないんだよ」


 学校の先生がどうこうじゃなくて、百億円も払える人なんて日本に数えるほどもいないでしょ。


「じゃあ学校行けないですね」


「んー? じゃあいくらからなら来る? 百万円?」


「正直、百万円なら行くかもしれないですね」


「百万円かぁ……」


「払えるんですか?」


「ごめん、ムリだ。あたし、毎月の支払いきつくて全然貯金出来てないんだよね。女の子って意外にお金かかるんだよ。全身脱毛のローンとか毎月の美容室代とかね」


「そうなんですか」


「じゃあさ、お金とかモノ以外ならどうかな?」


「お金以外ですか……」


 ちょっと考えてみる。


 送り迎えの送迎付きとか?


 毎日家の前までタクシーが来て帰りもタクシーというのは魅力的かもしれないな。


 正直、僕が学校に行ってない理由って『なんとなくめんどくさい』だし。


「逆になにがありますかね?」


「テストの答え貰えるとかどうかな? 全部百点とれるよ?」


「でも、なんかそれ虚しくないですか。実際賢くなったわけじゃないですし」


「それを言ったら元も子もないよー」


 口をへの字に目じりを下げる綿貸先生。


「先生ならどんな条件なら学校に行きたくなりますか」


「わたしの場合は……豪華なお昼ご飯が出るとか? 今日は中華で明日は和食、その次はイタリアンでフレンチのフルコースも良いなぁ」


 頬に手を当てて斜め上を見上げる綿貸先生。きっと先生には豪華な食事が見えているのだろう。


「先生口開いてますよ」


「あ、ごめんごめん。忙しくてお昼食べてないの。だからお腹すいちゃって」


「先生も色々と大変ですね」


「そうだよ、大変だよ。藤井くんがちゃんと学校に来てくれてたら今頃ラーメン屋にいるんだけどなぁ……」


 チラチラと俺を見てくる綿貸先生。


「同情で学校に行ったりしませんよ」


「ダメかー、先生にはどうすればいいかわかんないよー」


 頭を抱えて天井を見上げた先生は何かを見つけたような表情を浮かべる。


「ん?」


「なんですか?」


 俺は思わず聞き返す。


「この部屋にあるフィギュアとかポスターの女の子ってさ藤井くん好みってことだよね」


「まぁ、わざわざ嫌いなキャラのフィギュアを並べる趣味は無いですからね」


「これだよこれ!! 灯台下暗し!!」


 もしかして好きなフィギュアあげるとか言い出すんじゃないだろうな。


 それじゃさっきのお金くれるとほとんど同じじゃないか。


「わたしってば、どうしてこんな簡単なことに気が付かなったのかな」


 一人でテンション上がってる先生。


「こんな条件はどうかな」


「なんですか」


「学校に来たらおっぱいが触れるとしたら?」


「ぶ――――っっっ!?」


 思わず吹き出してしまった。


「な、なにを言ってるんですか!!」


「あ、クールな藤井くんが初めて動揺したね。効果アリってことだ」


「いやいや、教師たるものがそういうこと言ったらダメですよね」


「べっつにー、おっぱいって放送禁止用語でもないし。女の子にはみんなついてるしー」


 ジトっとした目をしながら見つめてくる。


「とにかく、その条件はダメです」


「あれだけ反応したのに?」


「驚いただけです」


「この部屋にあるフィギュアの女の子みーんなおっぱい大きいよ?」


「それはたまたまです」


 たまたまというのは事実だ。アニメのキャラはおおよそ胸が大きい。小さいロリキャラもいるが、やはりフィギュアとして映えるのは大きい方のキャラだ。


「ちなみに藤井くんはおっぱい触ったことある?」


「僕の経験のことはどうでもいいです。今は僕が学校に行く条件を話してるはずです」


「さっきもお金の話のときは仮定の段階でも行くか行かないかは答えてたよね」


「ぐっ」


 この先生天然でアホっぽいのに、急に痛いところをせめてきた。


「おっぱい触ったことないです。おっぱい触れるなら行きます」


「おー、すごい認めた!! 照れて触りたくないとか言うと思ってた。偉い!!」


「でも、先生は大事な点を忘れてます」


 俺はわざと真面目な顔を作って先生の関心を引き付ける。


「え、なになに?」


「おっぱいなら何でもいいってわけでもないんです」


「たしかに、ラーメンなら何でもいいわけじゃないもん。わたし今は完全にとんこつラーメンの口になってるし」


 この人、本当に腹減ってるな。


「でもさ藤井くん。そんなことより、おっぱい触ったら普通に犯罪だよ」


「先生が言い出したんでしょっ!!」


「そうだっけ? なんだかお腹すいて頭が回らなくなってきちゃったかも。ここで話してでもあれだし、先生の車でラーメン食べに行かない?」


そう言われれば僕もお腹がすいてきたような。


「え、はい」


「そうと決まればレッツゴー」


 勢いよく立った先生はバランスを崩して。


「あ、ちょっと先生あぶなっ」


 むにゅ♡


 っとした感触が俺の手に。


「今、おっぱい触ったよね。学校来る?」


「……はい」


 こうして、俺は再び学校に行くことになった。

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不登校の僕が学校に行く条件 にゃんちゅうだ!! @shigalucky3910

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