第26話:ほんと、ゲーム好きだな

ロキに『彼女なんていないよ』と言われた莉未は通話を終えた後、赤く染まって顔を両手で覆った。



(私…聞いちゃったよ…どうしよう。バレたかな?感づかれちゃったかな?でもすぐゲームの話しに戻したから大丈夫だよね。今度こそ平常心でいかないと…、で…でも嬉しい。そっかぁ彼女いないのかぁ)



この晩も莉未はベッドで枕を抱きしめていた。




♦♦♦♦♦♦♦♦♦




―――― ピンポーン


…だれ、まだ眠いんですけど。


ピンポーン、ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン!


ああぁ!うるさい!なんだよ、誰だよ迷惑だなあ!


外に睡眠妨害&近所迷惑野郎がいる玄関ドアを勢いよく開けた。



「うるさいなあ!…って…る、瑠美ちゃん?」



「嬌太郎の声の方がうるさいよ!!」



いやいや、それはないだろう。



「どしたの?」



「手伝いに来たんだよ!」



「へ?手伝う?」



「莉未ねぇに言われからわざわざ来たんだよ!」



「えーっと、話しが見えないんだけど」



「だーかーらー、マク〇ナルド行くんでしょ?一緒に行ってあげるって言ってるの」



「…ほんとに何言ってるか分からない。ごめんね」


莉未が瑠美ちゃんとマク〇ナルドに行けって指示したのか?様子がおかしいとは思っていたがここまで深刻な状態になっているとは。



「研修?だっけ。マク〇ナルドの広告の写真を取りに行くんでしょ?」



あー、そういうことね。莉未がおかしくなったんじゃなくて瑠美ちゃんが意味を全く理解していないのかな。


でも瑠美ちゃんが来たところでって感じもするけど。



「研究ね。それにマク〇ナルドには行かないし、広告の写真も撮りません」



「なに言ってんの嬌太郎?あったま悪いなあ~。さ、行くよ。お腹すいてるしさ!」



それはこっちの台詞だよ、とか言ったら怒るよな。


んー、これは真面目に返していたら長引きそうだ。



「んじゃあ食べに行こうか。おれも昼飯まだだったし」


ただいまの時刻14時。今の今まで熟睡していたなんてことは言えない。



「よーし!じゃあ今日は嬌太郎の奢りだー!」



まあそうなりますよね。



「へーい」



♦♢♦



「あのさ、本当莉未はなんて言ってたの?」


今更だがあの莉未が瑠美ちゃんに研究を手伝えなんて言うはずがない。



「べつにー、なんか嬌太郎と研究することになっちゃったんだよね、って電話で話し聞いただけ」


瑠美はムシャムシャとハンバーガーに食いつきながら答えた。



まあそんなところだと思ったよ。



「じゃあどうしてこっちに来たの?遊びに来るなら莉未のところに行けばいいのに」


毎回突然現れるのは疲れるからもうやめてほしい。



「こっちで遊びたかったの」



「おれと遊んでもつまらないってば」



「はあ?そんなの分かってるよ。何勘違いしてるの」



そこまで言われると流石に傷つくな…。



「……嬌太郎は今日一人なの?」


瑠美は食べるのを止め下を向いた。



「え?まあそうだけど」



「はあ…使えないなあ」



「な、なんだよそれ。そんな風に言わなくても…、あ、ああそういうことね。」


最近のおれは勘が鋭い。



「二人で食べるのもなんだし、あいつらも呼ぼうか」



「え!だ…だ…だだ誰を呼ぶの!?」



「誰って、山田と田中だけど」


睡眠妨害の仕返しだ。



「おい、○されてぇのか?お前」



やべ、不良っ子なのすっかり忘れてた。



「ご、ごめんごめん!瑛人と雪弥だよ、ちょうど話しもあるから呼ぶよ」



「バ、バカ!雪弥くん…来るの…?」


シーン…店内が瑠美の怒号で静まり返った。



「え、呼ばない方がいいかな?」



「バカ!なんで呼ばないの!」



どっちだよ…。



「わ、わかったよ。LI○Eしてみるよ」


スマホを取出しグループトークで誘った。




20分後…。



「嬌太郎くん、どうしたの?話しって」


雪弥は一人で店に入って来た。



「あれ?瑛人は?」



「あー、なんか研究が遅れてるから今日は行けないって。瑛人くんって真面目だよね」



真面目じゃないから研究が遅れてるんだよ。



「あれ、瑠美さん?こんにちわ。こっち来てたの?」


おれの向かいに座っている瑠美にようやく気付いた。



「あ…う、うん。こ…こここんにちわ」



「また会えて嬉しいな」


雪弥は瑠美の隣りに座った。



「嬉しいって、な…なななに!?ど、どうしてこっちに座るの!?」



「え?あ、ごめん。嬌太郎くんの隣りは荷物が置いてあったからさ。今移動するね」



「…いかなくていいよ」


席を立とうとした雪弥を止めた。



「いいの?なんかごめんね」



「…ううん」



「それで大事な話しって何?嬌太郎くん」



「あ」


そういえば強引に呼び込むためにそんなこと言ったんだったな…。



「え…えーっとさ、ほら!サークルの話しだよ。今後どうしていこうかなって」



「え、サークルの今後の話し?僕ゲームするだけだと思ってたけど、何か違うこともするの?」



「まあ、そうしようかなーって。あははは」


おれ達のゲームサークルに今後なんてものはない。



「ゲーム?雪弥くん…ゲームするの?」



まずい、雪弥がゲームオタクだって知ったら瑠美ちゃんも流石に引く…



「うん、そうだよ。瑠美さんはしない…かな?」



「するする!大好きだよ、いつもゲームばっかりしてる!」



ほっ、大丈夫だったか。瑠美も緊張の糸がほどけ、いつもの調子に戻った。



30分間ほどキラキラと星を飛ばす瑠美に雪弥は質問攻めにあった頃、電話で莉未に呼ばれ瑠美は渋々と店を出て行った。




「やっと一息つける、ってところかな」



「話してて楽しかったよ。それにしても瑠美さんって面白い人だよね」



それは誉め言葉なのか?



「ずーっとゲームのこと聞かれてたね。にしても雪弥はおれ以上にゲーム好きなんだな」



「かもね。帰ってレポート終わったら基本的にはゲームしてるよ」



「今はなんのゲームやってるの?」



「えっとね、侍○を1からやってるところだよ」



「へぇ、ずいぶん懐かしいのやってるね。4までやるの?」



「うん。昨日は深夜までやってたよ」



「そんなに?雪弥でもつまずく場面とかあるの?」



「いやそんなに難しくないんだけどさ、録画ができてなくて最初からやり直しだったんだよね。えへへ」



「録画?」



「うんうん、僕結構やっちゃうんだよね。おかげで寝不足になることもあるんだよ」



「どうして録画するの?」



「だって僕じっきょ…」


雪弥の顔は急に青ざめた。




―――― 雪弥…お前





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