第40話 最後の奉公
40 最後の奉公
天文19年1550年12月 六角定頼
ワシは今、公方様の前に座っている。これからの事を決めて説得するためだ。そのために細川晴元の代理人まで呼び足利義藤陣営の会談という形にした。
「管領代よ、其方から重要な話があると聞いたがなんじゃ?三好に対する策でも思い浮かんだのか?」
公方がこちらをじっとみる。まだまだ若造である義藤程度に見られた程度で何も感じはしない。
「はっ、三好との和議を提案しに参りました。」
会合に出ているものの中で騒めきが起きる。あちらこちらで何をいう!臆病者め!と騒ぎ立てる。言いたいだけ言うといい。
「では、六角は手を引きまするので幕臣の方々のみで三好と戦えばよろしいのではないでしょうか?」
そう言ってやると全員が黙り込む。
「…管領代という地位が無くなるかも知れぬのだぞ?それでも…というのか?」
進士賢光が声を上げる。別にそんなもの惜しくもない。既に幕府はあっても無きが如くだろうに。
「構いませぬ。和睦の条件に私の管領代辞任と隠居を盛り込むつもりですので。」
これもまた大きな騒めきが起きる。そんな!など惜しむような声も上がるがそれならば最初に無責任だなんだと騒ぎ立てなければ良いものを。
「そこまでの覚悟をしておるのか…。」
「はっ、亡き義晴様には良くして頂き幕府を盛り立てて参りましたが事ここに至ってはお家を守るためにも一度三好に屈する他ありませぬ。また、足利家にとっても京に戻り将軍は健在であると言う事を知らしめることこそが肝要にございませぬか?足利将軍家が京にいなければその威光が弱まり市井の人々は三好を新たな支配者として受け入れてしまいましょう。」
あちらこちらでううむと唸るような声が聞こえる。もうひと押しだな。
「それに、晴元や私の兵を合わせてもどう足掻いても三好の兵の数には及ばず、戦い続けた影響で周辺国が我々の領土を狙っている動きもありまする。今は力を溜め捲土重来、臥薪嘗胆にございます。私が隠居することで三好は警戒を緩めましょう。いかがでしょうか?」
「分かった。そこまでの覚悟を見せると言うならば管領代の意向に従おうではないか。良きにはからえ。」
ワシは頭を下げ感謝を示した。
「後で義賢と亀松丸を呼ぶように。」
「はっ」
公方様が辞した事によりこの会合は終わりを迎えた。
六角の最盛期を越えていけ!六角義治転生〜三好や織田相手に生き残れ!〜 ヒバリ @mokaryo
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