第126話

私達は食堂へと足を運んだ。

久々の食堂。

今日はどんな料理が出されるのだろう。


ワクワクしながら食堂に入ると既にみんなが揃っていた。


「ナーニョ、お帰り。待っていたわ」

「お母様、ただいま戻りました」

「ナーニョ、お前のおかげで城の者は大忙しだ。……よく頑張ったな」


ナーヴァル兄様が少し照れくさそうに話をする。以前と違って顔つきが朗らかだ。


やはりグレイス妃と離れたせいなのかしら?


「ナーヴァル兄様、ただいま戻りました。国が豊かになって良かったです」

「あぁ、本当だ。さぁ、席に着いて一緒に食べよう。今日はナーニョの好物も用意してもらったんだ」

「本当ですか!? 嬉しい」

「ナーニョ、お帰り。よく頑張ったな。今回の事をわしも誇りに思う」

「お父様。これもみんなのおかげです。私一人では何にも出来なかったのです」

「さぁ、とりあえず食べよう。ナーニョ、お土産もあるんだろう?」

「ケイルート兄様、そうですね」


こうして食事が始まった。出てくる料理、全て私の好物が運ばれてきた。


こんなに贅沢していいのかと思うくらいに沢山出てきて嬉しくなってつい、一杯食べてしまったわ。


食事も終えて、一段落した時、私はお父様に人払いをお願いした。


「ん? どうしたんだ? まぁいい。ナーニョ人払いとは何かあったのか?」


父は心配そうに聞いてきた。その様子を同じように母もナーヴァル兄様も同じ。

ただ、ローニャとケイルート兄様だけがニコニコと満面の笑みを浮かべている。


父が手を挙げて指示をすると、みんなが外へ出ていく。食堂に残ったのは家族だけとなった。


「ケイルート、お前、笑っているが何か知っているのか?」

「あぁ、兄貴。俺は一足先にお土産を貰ったからな! 凄いぞ?」


私は立ち上がると、用意していた小箱を一つずつ父達に渡していく。


「開けてもいいかしら?」

「お母様、開けてみて! お姉ちゃんのお土産は凄いんだからっ!」


ローニャはブンブンと尻尾を振りながら母の横に椅子を持ってきて座り、開けるのを待っている。


父達が箱を開け、各々指輪を取り出した。


「指輪じゃないか。これが人払いの理由か……?」


不思議そうにしているナーヴァル兄様。


「ナーヴァル兄様、その指輪を付けてお父様の手に触ってください」

「こうか?」


不思議そうにしながらもナーヴァルはナーニョの言った通りにする。


「そして『ヒエロス』と唱えてみてください」

「!? ヒエロス!」


ナーヴァルが唱えた瞬間父をホワリと一瞬淡い光が包んだ。


「おぉぉ、これは。治癒魔法ではないか!!?」

「そうなんだよ! この指輪にね、ヒエロスの呪文が描かれているの! 凄いよね」


ローニャが自分のことのように千切れそうにになるほど尻尾を振り、興奮しながら解説してくれる。


「王族はいつも狙われていると聞いたんでこれがあれば助かる確立が上がるかなって思ったんです。解毒の魔法も考えたんですが、これにしました」

「……これは一回だけ、なのか?」

「はい。この宝石のような魔獣の素材は魔力を貯める事ができるようなのです。でも一回分くらいしか貯められないのです」

「いや、これ、でも、これは、凄いぞ?? それにマートス長官からの報告は無かったぞ?」

「えぇ、マートス長官に送る前に、見つけてすぐに綺麗だなって思った時に気づいてすぐに指輪にしてみようと思ったんです。

ちゃんとエサイアス様に試して貰ったんで大丈夫だとは思うのですが……」

「流石ナーニョ、素晴らしいわ。これは私達にとってとても貴重な物。

それにこのデザインも素敵ね。ずっと身に付けておくわ。皆も付けておくのよ?」

「もちろんだ。これは本当に我々には必要な代物。必ず身につけておく」


みんながニコニコしながらすぐに指輪を付けていた。


その後すぐに侍女達を呼び戻し、また元に戻り、飲み物を飲んだ。


「ナーニョ、明日はドレスの試着を忘れないでね?」


母はお茶を飲みながら思い出したように話をする。


「もちろんです。でも、今日もこうして食事が美味しくて一杯食べてしまったし、お腹が入るかどうか心配です」

「心配ない。ナーニョはもっと太ってもいいくらいだぞ?」


ケイルート兄様はそう笑いながら言うと、ナーヴァル兄様も父も相槌を打っている。


「おねえちゃんとお揃いのドレスにしたかったんだけど、主役と同じドレスじゃ駄目だから我慢するね」


ローニャは残念そうにしながら尻尾を少し揺らしている。


「ローニャ、母とお揃いのドレスを作りましょう?」

「お母様、本当? 絶対だよ!」


何気ない会話だけれど、私達は本当に家族として受け入れられているのだと思うと嬉しかった。


そして明日の話を少しした後、みなまた執務に戻っていった。


仕事を増やしてしまってなんだか申し訳ないなと思い、皆が執務に戻るまえに魔法を掛け、私とローニャ部屋に戻った。


私は執務がないのは仕方がない。

ローニャはとても優秀らしいけれどまだ未成年。


それに魔法の研究を進めているので国の仕事は公務以外ないようだ。グレイス妃に招かれたお茶会以降はお茶会に顔を出していないのだとか。


お母様にローニャと知り合いになりたいと問い合わせる貴族は殺到しているようだが、お母様が心配だと許可しないらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る