第112話

翌朝、子爵をはじめ、街の人達も広場に集まった。


頑張って来いよ! と声を掛ける街の人達。夫人や妹達は涙を拭きながら手を振っている。


「お姉ちゃん! また何かあったら飛んでくるね!」

「えぇ、無理しないのよ?」

「大丈夫! アイツはもういないんだし!」

「……そうね。ケイルート兄様にも宜しくね」

「うん! もちろん! じゃぁね! カシュール君、さぁ行くよ?」


私は丁寧に地面に描いた魔法陣の上に私とカシュール君と縄で縛られた罪人の男が立っている。


「またね!」


そう言ってナーニョ達は消えていった。


「行ってしまいましたね」

「あぁ。寂しくなるね」


元気なローニャがいたことで明るくなっていた騎士団。やはり家族がまた遠くに離れると寂しい気持ちになる。エサイアス様は優しく慰めてくれた。


ローニャ達は王宮に戻った事をすぐに知らせてくれた。転移の魔法はあまり使うことがないので少し心配していたけれど、無事で良かった。ローニャ達が居なくなってからもやることは沢山ある。


ここの街の人達が魔法を使えるようにしておかなければいけない。


「ヒェル子爵、今朝、この街で使用する指輪が研究所から送られてきました」

「ナーニョ様、有難う御座います」


研究所から送られてきた指輪はヒエロス(怪我回復)とサーロー(土質改善)とターロー(水質改善)の三つの種類で二百個届いた。


あとはファール(手紙郵送)とファッジ(小包郵送)が二つずつ、研究所はローニャが全て試して使える指輪だけ送ってきたようだ。


街の人の人数には全然足りないけれど、子供を中心に配布することになった。


ここの街は魔獣の脅威があったせいで子供たちは成長が早いし、しっかりしている。この分なら問題なく指輪を使ってくれるだろう。


そして子爵には魔法を使う時の注意点を教えておく。中には魔力が切れて倒れてしまう人もいるからだ。


騎士団の巡視の効果もあり、街の周辺に魔獣は見なくなった。


指輪の効果を確認するため数日滞在をした後、私達はノーヨゥルの街を発った。



私達が去った後、ファールでヒェル子爵が研究所とやり取りを行うようだ。二人の娘達が魔法の練習を始めるだろうし、重い荷物などのやりとりも今後行えることになるかもしれない。


そうすれば物流が大きく変わることになるだろう。

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