第107話
ガターン!!
光から飛び出して床に転がってきたのは妹だった。
「!!! ローニャ!?」
「おねえちゃん!!」
ローニャは私の姿をみると泣き出して駆け寄ってきた。
「おねえちゃん!!」
ローニャが私に抱きついた時、扉が開かれた。
「ナーニョ様! 大丈夫でしょうか!?」
入ってきたのは二人の護衛騎士。
「お前は誰だ! 曲者か!」
護衛騎士は私の後ろを見ている。
……ローニャの他にも男も一緒に転移してきていたようだ。
「ここはどこだっ。おい! お前!!」
男は怒っているのかローニャに襲い掛かろうとしてすぐに護衛騎士に取り押さえられた。
ガタガタと震えて泣いているローニャ。
王都の方はどうなっているのだろうか。
「お姉ちゃん、怖かったよお~」
「もう大丈夫よ? 落ち着いて?」
泣き止まない妹を抱きしめて落ち着かせようとするけれど、泣き止む気配がない。
よほど怖い目にあったのだろう。
しばらく泣いた後、ようやくローニャは泣きつかれてウトウトしはじめた。
私は手を握りながらローニャをベッドに寝かせた後、父にローニャの無事を知らせる手紙を送った。
一時間程した後、グリークス神官長から手紙が届いて内容を確認する。どうやら専属の侍女がドレスを見に行こうと誘い出し、眠り薬を飲ませてローニャを連れ去ったようだ。
今は侍女とマダム・レミアを王宮の牢に入れ、現在は取り調べ中のようだ。
手紙を読み終え、エサイアス様に連絡を取った。彼はなだれ込むように騎士と共に部屋に入ってきた。
「ナーニョ様、大丈夫だった? 怪我はないかな?」
「えぇ、私に怪我はありません。ですが、ローニャは魔力が底を突くまで使ったようで明日まで目覚めないかもしれません」
エサイアス様も護衛騎士もとても心配そうにしている。私は先ほど王宮からの手紙をエサイアス様にも見せた。
エサイアス様宛の手紙も入っていた。
陛下からエサイアス様宛の手紙にはローニャが一緒に連れてきた男の自白を取れと書いてあったようだ。
捕まえた男は子爵家の地下牢に入っていたが、数人の騎士と共に駐屯所に行き、取り調べを行うことになった。
第十二騎士団の中にもローニャを信奉する人がいてかなり憤慨していたようだ。
後からエサイアス様に『自分が取り調べをしたい』と申し出る騎士達がいたと聞いたわ。
私はローニャが心配なこともあり、今日は部屋に食事を持ってきてもらい、ローニャを見守る事にした。
朝早くにローニャは目覚めたようでムクリと起きた。
「ローニャ、起きたの?」
「おねえちゃんごめんね。助かるために逃げてきちゃった」
「大丈夫。もう心配いらないわ。お父様にも連絡しておいたから」
「本当? 良かったっ」
ローニャは安心したせいか、疲れたせいか、まだ眠いらしくベッドで気づいたら寝てしまったようだ。
次にローニャが起きたのはお昼を過ぎた時間になっていた。
「ここは、どこだっけ?」
「ローニャ、目が覚めた?」
「おねえちゃん!」
「ローニャ様、目覚めましたか?」
姉と一緒に部屋にいたのはエサイアス様だった。どうやらご飯を持って来てくれたみたい。
もぐもぐと食べながら昨日の出来事を細かく話していく。
「確かね、攫われた女の子達は青馬倶楽部っていう貴族の集まりに連れていかれると言っていたわ。そこの元締め? にジョー様っていう人がいるらしい」
聞いたことを私は細かく紙に書いた。私が書いた物と昨日エサイアス様が取り調べを行った男の調書を父に送る。
男は抵抗すると思いきや、ここが王都から離れていることを知り愕然としたようだ。
そこから取り調べを行った騎士に心を折られ、あっさりと自供したらしい。
報告書を読んだという手紙はすぐにグリークス神官長から送られてきた。神官長も今回の事態を重く見て王宮にいるようだ。ローニャの情報と昨日捕まえた男の証言で捜査はかなり進展したのだとか。
今日の巡視は急遽休みになった。
街についてからずっと動いていたので騎士達もホッとしている。
ローニャには今の状況を話して今日一日はゆっくりと部屋で過ごした後、巡視に同行するか街に行くか聞いてみた。
明日は巡視に同行したいらしい。いつも研究所で魔獣の素材は見ているけれど、どのように退治されているのか見てみたいようだ。
「ナーニョ様、ローニャ様、おはようございます」
「おはようございます。今日はローニャと共に宜しくお願いします」
その言葉に騎士達はワッと声が上がる。歓迎されている事にローニャは嬉しそうだ。
私達はいつものように巡視に出掛けた。
子爵の話ではあまり大きな魔獣はいないと言っていたけれど、狼型の魔獣は他にも群れがいたようで街道を外れた所で出くわした。
騎士達はいつものように討伐していく。
ローニャにとっては物珍しそうにしていて興奮が抑えられないようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます