サイドストーリー ローニャの危機2

私はエリスの提案でマダム・レミアの店に行く事になった。久々に街に遊びに行くと思うと嬉しくってつい馬車の窓から外を眺めて言葉数が増える。


「ようこそおいで下さいました。王女様にはこちらのサロンで承ります」


そうマダム・レミアに言われサロンへ向かった。サロンには数名のスタッフが一列に並び一斉にお辞儀をしている。


「先触れを出していないのに凄いね」


何気ない一言だったの。その言葉にすぐに反応するようにマダム・レミアは答えた。


「いつも貴族の方が来られているのですぐに対応出来るようにしております」

「ふーん。そんなものなのね」

「どうぞロンダム店の菓子でも摘まみながらドレスを見て下さい」


マダム・レミアの指示で店のスタッフの一人がお茶とお菓子を持ってきた。


「美味しそう!」


エリスが毒見をした後、菓子を食べる。


「美味しいお菓子ね」


「今王都で一番の菓子店といっても過言ではないですから。こちらのドレスの試着をしてみませんか?」


トルソーに掛けられた数着のドレス。マダム・レミアはにこやかにドレスの試着を勧めてきた。


「ローニャ様にはとてもお似合いだと思います」

「うーん。でも時間があるし今回は辞めておくわ」

「ローニャ様、こっちドレスも素晴らしいですよ! ちょっと着てもいいんじゃないですか?」「ちょっとだけなら……いいかな?」


私はエリスとマダム・レミアにのせられて試着室へと入っていく。試着を手伝って貰った時、不意に眠気が襲ってきた。


「……エリス、もう戻るわ」


着替えの途中で試着室から出ようとするけれど、エリスが制止する。


「もう少し、お待ちください」


……その声を最後に私は意識を失った。




気が付くと小さな錆びた檻に入れられていた私。


指輪が……無いわ。取り上げられたようだ。周りを見渡すと同じような小さな檻に少女達が捕らえられている姿が見えた。


「ここはどこ?」


私がそっと声に出すと、蹲っていた一人の少女が答えた。


「ここは、どこかは分からないわ。ただ分かるのは私達は貴族の誰かに弄ばれるということだけよ」

「弄ばれる?」

「聞いたことないの? 最近王都で女の子の誘拐が頻発しているって」

「ごめん、知らなかった」

「私達は平民だけど、連れ去られてくる女の子は貴族の娘もいるのよ? 高値で売れるんですって」


その言葉を聞いた他の女の子達はシクシクと泣きだす。どうやら私は誘拐されたようだ。装飾品も全て盗られている。


少しの間黙って周りの状況を観察していると、入り口でシルクハットを被った男が何人かの男と話しているのが見えた。


ぼそぼそと小さな声で話しているようで他の子達にはあまり聞き取れていないようだ。ローニャは耳を男たちに向けて集中する。


「おい、王女を捕まえたんだって? でかした。これでジョー様も満足してくれるだろう」

「だが、いいのか? この世界で彼女達だけが魔法を使えるんだろう?」

「そんな事は俺達にはわからん。ジョー様が満足すれば俺達だって五体満足に過ごせるんだ。それ以上言うな」


ジョー様?

誰だろう。


「今頃王宮じゃハチの巣を突いたように騒いでいるだろうな」

「あぁ、さっき偵察に行ったが凄い騒ぎだったぜ?」

「レミアは即連行されたらしい。俺達も逃げた方がいいんじゃないか?」

「馬鹿言え。外に出た瞬間用心棒のシュローに殺されるに決まっている。俺達はただここの前で商品が逃げ出さないように監視するだけだ」


男たちはその後も話を続けている。


さて、どうしようか。

指輪は無い。

尻尾に付けていたお姉ちゃんとお揃いにした骨のチャームも盗られていた。

指輪でないものを作ったのに。

相手の方が一枚上手だったようだ。

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