第93話
「ビ、ビリビリしますっ! こ、これはっ!! アワワワ」
「ナーニョ様、だ、大丈夫ですか!?」
騎士達は驚きみんな立ち上がった。
「これは……魔力が、沢山含まれていますっっ」
魔力が減った身体に流れ込んだ魔獣の魔力。
身体は魔力を取り込もうと反応したのだろうか。しばらくすると全身を巡ったビリビリとした感覚が落ち着いてきた。
味は、びりびりに驚きすぎてよく分からなかったわ。
口に運ぶたびにビリビリと刺激してきた魔獣料理だが、食べていくうちに刺激は減り、魔力が貯まっていくことに気づいた。
「最初、食べた時は驚きましたが、慣れてくると魔力も貯まって刺激が落ち着いてきました。この料理、美味しいですねっ」
騎士達は私がパクパクと食べ始めてようやく落ち着きを取り戻し、料理を食べ始めた。
彼らは特に刺激はないらしい。
そして肉の塊は香草と一緒に焼かれているけれど、癖は中々に強いらしく食べるのに苦労しているようだ。
「癖が強いだろう? 血抜きをしっかりした後、塩漬けにしてから水で戻し、調理したスープの方が食べやすい。だが、滋養強壮にはそのままの肉が一番効果があるんだ。何故かはわからんが」
店主はクククッと笑いながら私達を見ている。
「おじさん、魔獣はどんな種類でも食べられるのですか?」
「どうだろうな? この街の近辺に出る魔獣は大体食べられる。蛇や虫っぽいやつは知らない。調理する気も起きないから食べたことはないんだ」
魔獣料理の話を聞きながら食べ進める。
やはり食べ進めていくうちに魔力の戻りがいつもより早く感じる。
これは新たな発見だわ。
今日の報告書にしっかりと書かねば!
考えてみればナーニョが送ってくれた魔獣のチャームも魔法が通りやすい。
魔獣自体が魔力を持っていてもおかしくはないのよね。別世界の生き物なのだから。
私はこうして魔力を自分の魔力へ変換しているけれど、魔力を持っていない人達はどうなのだろう?
後で護衛騎士の人達をみてみれば分かるかもしれない。ナーニョは新しい発見と煮込み料理の美味しさに上機嫌になった。
「あとで皆の体調を調べさせて下さいね」
「分かりました!」
料理を食べ終わった後、神殿に戻ってから護衛騎士達にヒエロスを掛けてみると、お腹を中心としてやはり魔力を感じる事が出来た。
魔獣の持つ魔力を変換せずに持っている状態のようにも感じる。店主は翌朝元気になると言っていたわ。
明日の朝も体調を確認するように伝えた。
湯浴みも終えてようやく一人になった時、早くも魔力も半分は回復したようだ。
私はニヤニヤしながら先程買った腕輪や商会長がくれた魔獣の肉をローニャに送ったの。
『ローニャ、今送った干し肉を一口食べてみてちょうだい』
しばらくすると返事が返ってきた。
『お姉ちゃん!! これ、何!? 魔力があるよ!!』
ローニャは素直に干し肉を口にしたようだ。その様子を思い浮かべクスリと笑いながら返事をする。
『この街で作られている魔獣の肉を使ったものなの。凄いよね』
『この腕輪もとっても綺麗! 気に入ったわっ。お姉ちゃんありがとう! 嬉しい』
『その腕輪も魔獣の骨と玉から出来ているの。私はまだ付けた事がないからどうかは分からないけれど、前にローニャが送ってくれたチャームのように魔法が使いやすいかなって思って買ってみたの。
使えなくても装飾品としてとても綺麗でしょ?』
『うん! とっても綺麗! 明日、研究所に持って行って付けてみるね! 扱いが分からない物を勝手に付けて使わないでってこの間ゼロさんに怒られちゃったんだよね!』
『ローニャ……あまり他の人を心配させないのよ?』
『うーん、そうだね。ついついやってみたくなっちゃうんだもん。気を付けるね』
ローニャからてへへと聞こえてきそうな声で話すとナーニョもホッと心が落ち着いた。
今日はナーニョも興奮していたのだろう。
妹の声を聞いて落ち着きを取り戻したようでいつものように少し会話をした後、すぐに眠りについた。
翌日、いつものように準備を終えた後、部屋の外で待機していた護衛騎士達に魔力を流してみる。
……凄いわ。
微々たるものだけど、魔力がある。そして昨日は魔獣の魔力を感じていたけれど、今は護衛騎士の身体に馴染むように魔力が形を変えているようだ。
「身体の調子はどうですか?」
「いやー今朝の目覚めはとても良かったです。今までにないほど身体が軽く感じます。夜は疲れが酷かったようで眠るまで身体が怠くて動くのもやっとの状態でしたが。あの肉のおかげなのでしょうか」
どうやら夜から翌朝にかけてゆっくりと魔力は変化していったようだ。他の護衛騎士も同じように頷いている。
「体調が良くなってよかったです。今、みなさんの身体をみたらごくわずかですが、魔獣肉の持つ魔力を自分のものに上手く切り替えられたようです」
「!? 本当ですか?」
「えぇ、今、グリークス神官長のようにごくわずかに魔力が体力を底上げしているのかもしれないですね」
私の言葉を聞いて笑顔になる騎士達。
あの癖の強い肉を頑張って食べたおかげだろう。
よくお腹を壊さなかったなと私は内心思ったけれど、それは内緒だ。
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