第11話

 翌日の朝、天気は晴天。


 私の気持ちも晴れやかでなんて素晴らしい朝なのだろうと神様に感謝で一杯になったわ。


「神父様、ありがとうございました。また宜しくお願いします」

「あぁ、ナーニョ。パロにも宜しく伝えておくれ。

 寮に入るまでの間、こちらの方に住めるよう部屋は用意しておくからのぉ」

「何から何までありがとうございます」


 私は帰宅の途についた。


 行きは長く感じた三日間だったけれど、帰りはとても短く感じた三日間だったわ。





 王都からの乗合馬車が到着すると、ローニャは手を振って迎えてくれた。とても心配してくれていたみたい。


「お姉ちゃん、お帰りなさい! 王都の街はどうだったの??」


 興味津々で聞いてくるローニャ。


「まず神父様に帰ってきた事を報告してからよ?」

「うん! そうだよね。二人ともとっても心配してたんだからっ!」


 ローニャに手を取られ急いで急いで神父様の元へ向かった。


「ただいま戻りました」

「おお、ナーニョ、無事に帰ってこれて良かった。王都はどうじゃったかな?」

「人が多くて驚きました。はいこれ、お土産です。神父様は甘い物が好きだと聞いたので買ってきました」

「ありがとう。さぁ、みんなで茶でも飲んでナーニョの話を聞くか」


 シスターは笑顔でお茶を淹れてくれた。


 テーブルを囲んで私は話をはじめた。


「お姉ちゃん、試験どうだったの?」

「神父様のおかげで受かったの! 合格よ!」

「おめでとう! でも神父様のおかげってなぁに?」

「何かあった時に先祖返りである祖母の名前を出すといいって言われてたの。

 国王軍の受付で試験を受けたいって話をしたんだけどね、鼻で笑われて受けられなかったの。

 困った私は祖母は先祖返りをしていると話をしたの」


「そうしたら、受けられたの?」

「そうしたら本人が出てきたの。驚いたわ。おばあ様はまだ現役で魔法使いなの」

「そうなんだ。おばあ様はどんな人だったの?」


「んーお母様とやはり似ていたわ。おばあ様は私が若いころのお母様にそっくりだと言っていたけれどね」

「それなら私もお母様に似ているってこと?」

「ふふっ。そっくりよ? でも私と同じで耳と尻尾はお父様ね」


 私の言葉を聞いたローニャはとても嬉しそうだった。


 幼かったローニャにとって両親との思い出は少ない。


 両親との共通点があることが嬉しいのだと思う。


「試験はどうだったの? んー訓練場で指輪を選んで的に当てるのと訓練場にいた兵士の人達に範囲魔法で回復させることだったわ。あと筆記試験もあった。

 筆記試験は神父様が口を酸っぱく言っている事が出ていたからすぐに解けたわ」


「私も魔法使いになれるかなぁ」

「なれると思うわ。むしろローニャの方が魔法使い向きだと思う。私は回復魔法が得意だけれど、それ以外は考えなしに魔力を使うだけだもの」

「ナーニョ、頑張ったのぉ」

「合格したのも神父様とシスターのおかげです」

「お姉ちゃん、いつから街に住む事になるの?」


 ローニャは少し心配そうにしていた。


 十六になるまでこの教会に残されるのかと思っているのかもしれない。


「うーん、この書類では手続きが完了次第すぐに働く事になっているから荷物を纏めてみんなに挨拶したらって感じかな」

「おねえちゃん一人で行くの?」

「もちろんローニャも一緒よ?」

「本当?」

「だって私達は姉妹でしょう? 大事な妹を置いていけないわ」

「お姉ちゃん!!」


 ローニャは泣きながら抱きついてきた。


 きっと私を待つ間心細かったのだろう。


 ローニャのフワフワな髪の毛を撫でながら頬笑む。


「そうとなれば荷物を纏めねばならんのぉ。ナーニョ、入寮の手続きが終わったらすぐに入れるはずだ。

 上手くいかなければまたあの老いぼれジィの所にいくのだぞ?」


「ふふっ。わかりました。ジョナ神父様はパロ神父様の事を心配していましたよ」

「あやつは私より頑丈だから心配いらんのぉ。だが頑丈な分無理するから偶には顔を出して回復魔法をかけてやっておくれ」

「はい」


 私達は王都に向かう準備を始めた。


 もちろん友達や村人達にも別れの挨拶をする。


 サーシャ達はこのまま村に住み続けることにしたようだ。


 モニョは隣村のアナグマ種の人と来年結婚する事が決まっていて、とても幸せそうだ。



 こうして私達は街に向かう準備を終え、別れの時が来た。





「神父様、シスター。長い間お世話になりました。ここまで成長出来たのもこの村の人達や神父様達のおかげです。

 本当にありがとうございました」

「……いつでも帰って来るのですよ?」

「用意したお金は要らないのかのぉ」


 ナーニョ達は神父様が残してくれた村のお金を置いていく事にした。


「心配いりません。給料の入るまでの一月分の生活費があれば私達は十分です。

 どうか教会で使ってください。馬車もそろそろ出発しそう。では行ってきます!」

「あぁ、きをつけるんだぞぉ」

「二人に神の加護がありますように」


 私達はリュックを背負って乗合馬車の一番後ろにに乗り込んだ。


 カラカラと出発する馬車から手を振る。


 こんなにも別れを寂しいと思ったのはいつぶりだろう。


 給料が入ったらまた村に戻ってきて神父様とシスターに話をしよう。


 長い間両親の代わりに育ててくれた神父様達に感謝しかない。

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