第159話鹿児島目指して
翌日、星田と柳井は九州最南端の佐多岬目指して、朝4時ごろ出発していった。また、大阪に帰る途中で寄ると言う。私は道中の無事を祈りながら、新聞配達に行って、帰ってからしばらくして、関門人道トンネルに着いたという連絡が入った。いよいよ九州に入っていくわけであるが、九州の東海岸に沿って走る場合、国東半島の付け根を横切る立石峠越え、さらには宗太郎越えと言う難所が控えている。山口から佐多岬を目指す場合、東側を走った方が距離は近いが、険しい山越えをしなければならない。
「今頃どこら辺を走ってるんやろ?」
そんなことを考えながら地図を眺めてみる。今みたいにナビシステムがあるわけでもないので、地図だけが頼りの旅だったと思うが、山口を出発して初日の宿泊地の行橋に着いたという連絡があったときは、やはり安堵したのを今でも覚えている。途中でパンクと言うアクシデントに見舞われて、予定よりも1時間ほど遅れたそうである。彼らは自転車の修理道具も持参しているので、かなりの荷物になっていた。
「これからまた同中長いんやから、事故に遭わんように気をつけてや」
「ありがとうなぁ、明日は杵築で泊まるわ」
そう言って電話を切った。二人が再び山口に入るのはお盆休みに入ってから。ということで、お盆休み前に母の実家に帰省した。このため新聞販売店の方には、この日は休ませてほしいと前もって連絡しておいた。私たちが実家に行くと、相変わらずまるちゃんからの熱烈な歓迎が待っている。やはりまるちゃんにとっても、誰かが来るというのは嬉しいものなのだろう。母の実家に着くとまずはいつものようにまるちゃんの散歩へ。私が小学3年生のころにやってきて、もう7年が過ぎて、人間で言う中年に差し掛かってきたころである。1時間くらい散歩に出かけて、家に帰ると陽が西に傾いてきて、田んぼを吹き抜ける風が心地よく感じられた。やはり市街地よりも田んぼや畑がある方が空気が冷やされるためか涼しい。そして街灯がほとんどない夜空を見上げては、星に無事に二人がゴールできますようにと願いを込めた。夏の夜空は天の川がくっきりと見えて、星空に吸い込まれるような感じであった。畑の方からは虫のなく声が響いて、暑い中にも夜になると少し秋の気配が感じられるようになる。虫の鳴き声も少しずつ移りゆく季節を表しているようであった。
母の実家には1泊して帰って、しばらくすると星田と柳井から電話で佐多岬に着いたという連絡が入った。山口を出発してから福岡・大分・宮崎・鹿児島と南下する旅の最終ゴールに着いたわけであるが、声を聞く感じでは、山口を出発した時と同様、元気そうであった。途中でパンクと言うアクシデントはあったものの、天気には恵まれて、順調に旅ができたようである。佐多岬で2泊して体力を回復させた後、今度は九州の西海岸を北上するという。佐多岬から西海岸に出るためには、大隅半島の西側を北上する必要があるが、桜島がまじかに見える景色は迫力があるのではないかと思う。大隅半島を北上して鹿児島市内を受けて、薩摩半島の付け根を横切る山越えをすると、あとは不知火海・有明海に沿って北上していくコースになる。
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