第148話異性

 高校生ともなれば、女子と話をするとき、どうしても異性ということを意識するようになる。中学の時はあまり

「女子である」

ということは意識することなく話をしていたが、やはり高校生にもなって大人へと近づいてくると、やはり

「この子可愛いな」

とか、

「女子と話したいな」

とか思うようになり、どことなく話し方がぎこちなくなっていた。家に帰れば年子の姉がいるし、少し年が離れているが、妹もいる。やはり家族とクラスメイトの女子と言うのは、まったく違うものであると実感した私である。しかし、そのぎこちなさも次第になくなって、普通に

「異性」

と意識せずに話ができるようになったのは入学してから1か月くらいたってからであろうか。最初のうちは私と同じ学校から入学した竹本(ユッキー)や石田(えっちゃん)という女子とは気兼ねなく話せていたが、やはり違う中学校出身の女子を目の前にすると、少し緊張していて

「リンダ君、ひょっとして緊張してる?」

などと言われて

「うーん。まあねぇ…」

などと言って、桝田(みっちゃん)と柳田(なおちゃん)という演劇部に入部した女子とユッキーやえっちゃんと言った女子が気軽に話しかけてきてくれたので、私の中にあった小学校卒業以来、私に残っていた

「女子アレルギー」

が少しずつ和らいでいった。一緒に冗談言ったり、好きなアーティストの話で盛り上がったり、女子との会話を楽しむ自分がいた。このころになると、私が山口に引っ越して以来ずっと心の中にあった

「女子はいつか俺を裏切る」

と言った疑いの念もこの高校の同級生の女子に関しては抱くことは亡くなっていた。そんなある日、私が自分の小遣いをためて初めて買った私が好きなアーティストのチェッカーズのオリジナルアルバム、SONG FOR U・S・Aの歌詞カードを、プリントを挟めるクリアファイルに挟んで持っていって、自分の机の上に何げなく置いていたら、直ちゃんが見つけて、

「リンダ君、これちょっと見せてもらってもいい?」

と言うので、私は

「好きなだけ見ちょっていいよ」

と言うと、嬉しそうに歌詞カードを眺めていた。彼女はチェッカーズの大ファンだったのである。私は今でもチェッカーズの曲をよく聴いているが、チェッカーズの曲を聴くと、彼女の底抜けに明るい笑顔を思い出す。今頃彼女はどうしているのかな?ふと懐かしく思い出すときがある。

このころはバンドブームで。チェッカーズのほかに、安全地帯やC-C-B・XJAPAN・ショーヤ・プリンセスプリンセス・爆風スランプなどがヒットを立て続けに飛ばしていた時代で、音楽番組にもよく顔を出してた頃で、私にとっては大切な青春の1ページになっている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る