第96話同窓会への誘い
そんなさなか、まだ大阪から引っ越ししてほんの数日しかたっていないのに、浜山から一通の往復はがきが届いていた。それは
「5月3日に同総会を開催したいと思います。出欠の確認をしたいと思いますので、4月15日までに返信をお願いいたします」
というものであった。私は
「あぁ、5月になったらみんなで6年4組の教室に集まるって言ってたよな。俺は参加しないって言ったのに、今更こんなものよこしてくんな」
と思って無視していた。どうせ私が行ったって、誰も喜びはしないと思ったからである。さんざん私のことをいじめ倒した上に。あれだけ私のことを嫌っていたくせに
「こういうときだけ仲間なんだから参加して」
って言われても、参加する気にはなれなかった。自分だけ惨めな思いをするのが目に見えていた。それに、大阪から引っ越ししたばかりで、父も母もまだ山口の就職先が決まったばかりで、給料ももらっていないのに、私一人だけ大阪に行くだけの余力なんて残っているはずもなかった。
それに、あれだけ私は参加することはないと、1月の時点ではっきり伝えていたにもかかわらず、なぜこのようなはがきをよこしたのか、私にはその神経が理解できなかった。マジであり得ないと思ったし、怒りや憎しみや恨みの感情が一気に噴き出してきた。それがまた、フラッシュバックを引き起こし、脳内であの凄惨ないじめの現場がリアルに再生されて、息をするのも苦しいくらい、呼吸が激しくなっていった。「なぜまだ私のことをいじめたがる?」
「ようやっと訪れたいじめから解放された日々だったのに、まだ俺の事をいじめ足りんのか?」
「カモがいなくなって、こうやって同窓会に呼び出して、一日、数時間でもいいからお前のことをいじめさせろ。お前にリンチを加えさせろ。」
そう言っているような声が耳の奥でじんじん聞こえてくるのである。もうすぐ中学校が始まるという、環境の大きな変化があったうえに、誰も知らない奴ばかりのところでこれから生活していかなければならないというストレスに加えて、PTSDに辛い記憶のフラッシュバック。もう私の心自体が激しくきしみ始めていた。ふだんの生活でも、何もやる気が起きないし、何をやるにも気力がわかないのである。周りから見れば、毎日無気力に生きている自堕落な奴に見えていたかもしれないが、これほどまでにいじめにさらされ続けた私の心の中は荒んでいた。何かのちょっとしたことがきっかけで、自殺してしまいかねない状態であった。こうして、非常に不安定な精神状態の中、中学校生活が幕を開ける。
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