第141話 転生少年の新しい生活、平常運転中。


本作のPVが60万を超えました(*´ω`*)

うほほい! 嬉しいのぅ! こんなに多くの人に読まれる日が来るとは夢の様だっ!


本作の主人公クリン君も丁度この回で喜びの舞を踊っております(笑)



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 こうして晴れて隔離勉強となったクリンは、テオドラの手習い所では浮いた存在となった。と、なりそうな所であるのだが、浮いているは浮いているが実はそれなりに他の子供連中と馴染んでいたりする。


 それと言うのも、


「外国の人にお勉強教えてもらった事が有るなら、何か外国の面白い話知らない?」


 と言う、娯楽に飢えた子供の質問が飛んで来た為である。通信網が発達していない世界において、見知らぬ国外の話題はそれだけで娯楽たりえる。


 興味津々な子供に対して、「コレはもしかして僕の文字練習の良い題材になるのではないか」と考えた転生少年が、文字学習用の教板に覚えたばかりの文字を使って、前世のお伽話を読み聞かせ始めた。


 先ずは定番の桃太郎から、と、子供達を集めてまず出だしの一節を教板に書き、次いでそれを声に出して子供達に読み聞かせる。


 ちょっとした幼児向けの学習の様なスタイルだが、これにより子供達も字を覚える役に立ち、クリンはクリンで自分の文章構成の練習にもなり、またこの世界の既存の物に置き換えて説明すると言う行為がこの世界での常識を身に付けるのに大いに役立った。


 尚、この時に教えた桃太郎は原初バージョンではなく、昭和頃に再編纂されたバージョンだ。流石に原初版の、モモを食って爺さん婆さんが若返ってエロい事をして子供が出来るとか、説明するのは憚れたためである。令和編纂版もあるのだがそちらは聞きかじっただけなので詳しくは知らない。


 コレは子供達にもテオドラにも受け、他にもかぐや姫やら猿蟹合戦やらのお伽話を語って聞かせたりした。


 その内マンガ日本話にまで手を出し、やがて日本のお伽話のネタが尽きてグリム童話にまで行った所で、ディ〇ニーアニメを語り聞かせた辺りから怪しくなった。


 そして調子に乗ってジャパニメーションを異世界お伽話風に語り聞かせて一年半後にはテオドラに怒られる様になるのだが——それは今回、別の話である。





 この様にテオドラの手習い所で学習する間にも、クリンは森の中の拠点整備に邁進し続けている。


 今は町に行くのは一週間(十日)の間に五日か六日にし、手習い所での勉強は昼過ぎに終わるのでその後は森での資材集めに当て、それ以外の日はガッツリと家の改造と広場整備に勤しんでいる。


 先ずは小屋の回りの下草を綺麗に刈り取り、小屋が完成した翌日には水路跡の掘り起こしで出た土を元にレンガを作り、それを野焼きして焼きレンガにすると、そのレンガを更に利用して窯を作った。


 その窯で焼くのは残った粘土を水で練って薄く板状にした物——原始的な瓦である。素焼きであっても粘土を良く練って薄く延ばせば瓦として十分使えるのである。流石に草葺きの屋根では心もとないので、翌日からはこの瓦を量産している所だ。


 その間にもテオドラの手習い所に顔を出しているので、少年にしては割と必要量を焼き上げるのに時間が掛かっている。


 とは言え作業一つだけで終わらせられる程に恵まれた環境では無い。この間にも少年は森を探索して朽木や倒木を拾い集め、前の村で作ったノコギリや鉋、鑿を駆使して木材に加工し、大雑把ながらも木枠を作り出してその中に川から砂や土、砂利などを集めて森からは苔や堆積している落ち葉、枯れ木に枯れ枝などを拾い集め、木枠の中に層が出来る様に積んでいく。


 コレは勿論浄水器だ。前世でもサバイバルで水をろ過するのによく使われている技法で、サバイバルニキのトーマスもコレと似た天然濾過装置を作って居る。


 クリンもそれを元に他のサバイバル動画を参考に多少の改良をしている。大きな違いはトーマス式の場合は何度も水を掛けて濾過器その物の洗浄をしないと使えない事と、サバイバルなので貯水式につくっているので、自然に溜まった物を組み上げる必要があった。


 それに対し、クリンは最初に濾過に使う材料を徹底的に洗って綺麗にしてから使う事で洗浄運転の必要を無くした事と、サバイバルでは無いので設置型に出来た為、濾過機に栓を儲けて時間経過で少しずつ滴り落ちて、別途に用意した素焼きの壷に濾過水が一日かけてたまる様にした所が違いである。


「安全な水の確保も目途が付いた……となると、次は寝床だっ! 快適な睡眠は日常のぱふぉーまんすにえいきょぅにょまっ……痛っ! 舌噛んだっ! ええい無駄に知的な事を云おうとするのは止め! いい加減藁じゃないベッドで寝たいんだ僕は!」


 クリンはコレまで藁ベッドで寝ていたのだが、実はあれはあれで意外と不便だ。チクチクするしガサガサ音がするので睡眠が浅い時は実に鬱陶しいし、フカフカなので実は虫とかネズミとかの小動物も好きで中に潜り込んでいたりする事もあるし、寝ている時に忍び込まれてガサガサやられて夜中に起きたりする事もある。


 そして何よりも乾燥させただけの植物なので、普通に腐るしカビも生える。そうなると結構臭い。藁も無限に手に入る訳では無く色々と使い道がある物なので、ベッドにだけ使える訳でも無いので、実は農村でもそんなに頻繁に交換できない。


 冬場はまだいいが春から夏にかけて寝汗を吸った藁が結構腐るしカビる。そして放って置けば発酵する。発酵した藁は肥料に使われる位の物なのでステキな臭いがするのだ。


 ましてや夏場は藁の端境期。秋に収穫される麦の藁を使う関係上一番腐りやすい時期に残りの量を計算しながら使うのでこの時期が特に寝にくい。また藁の保管場所もそんなに環境が良く無いので保管場所自体で発酵する場合もありその時は目も当てられない。


 街とかだと庶民でも藁ベッドの上にシーツなどを掛けて、そのシーツを交換すれば割と藁が長持ちするが、クリンが暮らして来たような田舎の農村だとそんな贅沢は出来ない。


 村長クラスの資産が無ければ藁に直寝が基本である。冬場に上から布や上着を掛ければ良い方だ。


 転生してからこの方、その生活に慣れてしまっていたが、一人暮らしが出来る今もその状況に甘んじる必要は何処にもない。


「と、言う訳で僕は藁じゃないベッドを作る! それこそ人間らしい生活と言う物だっ!」


 何気にこの世界でも下手したら貧民街の連中の方がクリンよりも良い暮らしをしている事を数日の貧民街暮らしで悟ってしまった少年の、コレは意地である。


 まぁ、家が出来てからのこの数日の間も寝る時は木の上だったので、今更かよ感はあるのだが。ともあれ少年は己の野望を果たすべく、森から拾ってきた木材の加工をする。


 まだ重い物は運べないクリンにとって、倒木や朽木は貴重な材料である。乾燥の手間も掛けずにすぐ使えるのも良い。


 その代わり質はピンキリなので厳選し加工に手間が必要になってはいる。しかしその手間も少年にかかれば「そこが腕の見せ所」と言う事らしい。喜々としてノコギリや鉋を駆使して木材に加工していく。


 そうして加工された木材を組み合わせ、今回は釘を使わない代わりに木材を楔として使用した、木製ベッドの木枠があっという間に組み上がる。勿論これは。


「うんうん、この小屋の中なら作業場と認識できるようだね。クラフターズ・コンセントレーションが問題なく使えるっ!」


 例の使い所の難しいスキルの恩恵である。本人の認識次第なのかどうかはまだ分からないが、最低でも屋根が付いていない場所は作業場と認めてもらえず、コンセントレーションは使えなかったが、この小屋が完成した事でクラフターズ・コンセントレーションを使用しての作業が可能になった。これもクリンがこの小屋の完成を急いだ理由である。


 とは言え現状数分しか使えないのでこのような組み立て作業にしか使えないのが難点と言えば難点である。


「まぁ、旨いばかりの話は無いってヤツだね。使い勝手が多少悪い位が丁度いいってもんだよ。さて、次は……っと」


 ブツブツと独り突っ込みをしながら作業を続けるクリンである。クリンは予め割いて干しておいた木の籤を、先ずはベッドの縦に枠に沿って縛り付けて行く。この時なるべく撓みが無いようにピンと張るのがコツだ。間隔は少し空いても構わない。張り終えたら今度は枠の横側から木籤を交互に編み込む様に通して縛り付けて行く。


 コレは土壁に使った小舞と同じ技法、それの更に発展した形の籐細工の技法に近い。いわば木籤のネットをベッドの天板代わりに使ってしまおうと言う発想だ。中弛みが困るので、数本の縦横に少し厚くて太目の籤を通して補強しておくのも忘れない。


「っしゃ! クリン君特製、木籤メッシュのベッドのかんせーだぁっ!」


 ふほほい、と一人で奇妙な踊りを踊りながら喜ぶクリン君である。何気に藁ベッド生活に嫌気がさしていたのだった。


「これから夏だから寧ろこの方が通気性が良くて良いでしょ。冬になる前に毛皮だのシーツだのを作って敷けば冬でも温かく寝れそうだし。スプリングマットとか無いこの世界ならコレの方がむしろ寝心地良いのじゃなかろうかしら!」


 とクリンは自画自賛する。試しに横になってみるが寝心地は初めて作ったにしては上々である。


「うん、最初はコレとハンモックとどちらを作るか悩んだけれどもこっちにして正解だったねぇ。場所取るのが難点だけれども今の僕のサイズならコレでも十分スペースあるな」


 ハンモックなら吊るすだけなので場所が空くのだが、アレはアレで不便な所もある。ハンモックを使うのにはある程度の高さが必要だ。


 土壁の家にした関係上、強度のある場所にハンモックを吊るすとなれば天井付近を使うしか無く、その高さだと少年だと梯子が必要になるし、何よりその高さだと囲炉裏で燃やした薪の煙が直撃する。


 そしてその高さだと何よりも落ちた時が怖い。ハンモックは固定法がしっかりしていないと意外と滑落したりする物だ。


 現状ではハンモック用スタンドで十分な強度を出すのであればベッドサイズのスペースが結局塞がるので、大して作る意味が無いのでこちらにしたのであった。






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はい。クリン君はここに来て中々かっ飛ばして色々作り出しています。そして、相変わらずの異世界テンプレブレーカー!

藁ベッドにダメ出しをし始めています(笑)


いやぁ、何を隠そう昔諸事情で農家の手伝いをしていた時に1年位藁ベッド生活していたんですよねぇ(笑)


あれ、マジでこんな感じです。藁ン中にアブが飛び込んで物凄い音がして何度夜中に目が冷めた事か(笑)

そして、結構いい匂いがしてきて肌がかぶれるんですよ、古くなった藁って……

こんな事を再現して喜ぶ物好きはワシだけだろうな(笑)


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